踏み出せるその日まで【ブラコン】 (ページ8)

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神の降臨ページ8

椿さんより、一足早くスタジオ入りし、ばっくばっくとうるさい心臓を抑えながら、椿さんを待つ。
なんと言えばいいかな。ずっと大好きだったキャラがリアルに現れるとか、崇めてた神が降臨するビッグイベントの直前のこの落ち着かなさ。……誰かわかって。
ひとり悶々とそんなよく分からないことを考えながら、台本とにらめっこするが、当然ながら全く頭に入って来ない。

「朝日奈椿さん入りまーす」

聞こえて来たスタッフの声にびくぅっと大げさなまでに反応してしまった。
ぎぎぎぎという音が聞こえそうな動きで後ろを振り返ると、ずっと画面越しに憧れてた人が立っていた。

慌てて立ち上がって挨拶に行く。

「あ、あの！し、白石Aです！きょ、きょ、今日は、よろしくお願いしますっ！」

どもりまくりながら、なんとか挨拶を済ます。
ああああ絶対変な子だって思われたよね。っていうか神々しすぎて顔あげられない。直視したら絶対目が死ぬ！

椿「君……」

椿さんのつぶやきが聞こえて、思わず顔を上げる。
はっ、直視してしまった……と思うより早く、目の前の椿さんがぶれた。
わかりやすく言うと、椿さんがこっちに飛びついて来たのだ。

椿「ちょーかーいいね！！俺の好みどストライク！」
「ひゃ！？」

な、何が起きているんだろう。え、これは、夢？ああでも夢でもいいや。……このまま死ねる……。
と、意識を手放しかけるが、このあと収録だろうが！となんとか自分を奮い立たせる。
よ、よし！

「あ、あの椿さん……？」

未だ私に抱きついてる椿さんの肩をとんとんっと叩く。
このままだと本当に心臓がもたない。

椿「あ、ごめんごめん☆ すっごい可愛い子だったからつい」
「いえ、あの、可愛いだなんて」
椿「照れてる顔もちょーかいい☆」

そう言って椿さんは私の頭を撫でてきた。