【柘榴】御影 灯芽の場合 ページ3
「きゃあああぁあ!!」
「うわぁあああぁ!!」
いつの間にやら出来出した人垣が叫ぶ。
一般人と言えどさすがに囲まれるのはまずいか、とまた大きく舌打ちをして身を翻した。
「逃がさんぞこの獣めがぁああ!!」
バタバタと追いかけて来ようとする黒服に振り向きざま、銃弾を乱発。
多少静かにしたところで、アジトに向け戦略的撤退だ。
そう、これは逃げではなく、戦略的撤退である。
誰があんな糞どもに背を向けて逃走するかってんだ、と誰に言うでもなく悪態をつきながら路地裏に飛び込んだサンは、視界に人型の生き物を捉えた。
進行方向にいたのは少女だった。黒い髪、大きく見開かれた青い目、頬には黒い鱗……。
すわ人間か、叫びだすかとよくよく観察してみれば、どうやら自分の同族のようだ。
鱗がアクセサリーである可能性を考えて一応、呼びかけてみる。
「おーい、お前獣忌か?」
少女は首を傾げると、自身の体に巻きつけていた蛇――うわっ、そのおっきいの本物かよ、と慄くサン――に何やら話しかけている。
そして、サンの方に向き直るとコクンと頷いた。
正真正銘自分の同族であることを確認して、満足げに頷いたサンは
「くそがっ、あの薄汚い害獣はどこに行った!!」
との声に、はっと我に返った。
そういや俺、逃げてるとちゅ……ゲフンゲフン、戦略的撤退の途中だったわ、と思いながら、がしっと少女の襟首をひっつかんだ。
このままここにいたらこの少女まで捕まってしまう。
と、サンは全力で少女を引きずって、森の奥へと駆け出した。
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作者名:氷渡ミオ | 作成日時:2018年3月13日 19時