好き ページ42
「…俺言ってなかったっけ？」
「うん」
「じゃあ柿崎さんは俺がアイドルだと知らずに仲良くしてくれてたんだ」
「うん」
「なにそれめっちゃ嬉しいわ」
優しい表情をしてクシャッと笑う。
これ食べていい？と聞かれてどうぞと答える。
うわー、青春の味だわーとか言ってる。
ふふふ、なんか楽しい。
緊張してるけど、すごく楽しい。
「…柿崎さん、俺ね」
「うん」
「卒業式の日に、梶間と柿崎さんが付き合ったと思ってたんだよね」
「え！なんで！」
「…その前に梶間に告白されてたでしょ？」
「ああ…うん。それ聞こえてたんだよね？」
「そう。それで卒業式の日に気持ちに気づいた。ありがとうとか言ってたからてっきり」
「…そんなこと言ってたのかなあ」
「覚えてないの？！」
「…なにを言ったかまでは正直覚えてない…」
「うっそ、まじか」
なんか焦った感じでそっかそっかとか呟いてる。
「…俺はまた見たくないところを見てしまったと思って、帰ろうと思ったんだけど、柿崎さんと話さないと後悔すると思って探してたのね」
「…うん」
「そしたらその途中で最悪なことに梶間に会って」
最悪なことに、って。
少し苦笑いをする。
「自分の気持ちを隠したまま卒業していいの？って。これからあまり会えなくなるよ？って言われてさ」
「…うん」
「俺は振られた、って。それで背中押すとかバカかよ！って思ったけど。俺めちゃくちゃ悔しくて、悲しくて、でも勇気でも出て、伝えようと思ってたのに会えなくて終わった」
「…」
「ダサかったなあの時の俺」
「…ダサくないよ」
「…」
「ダサくない」
「…うん」
渡辺くんがお茶を一口含んだ。
「そのまま連絡せずに10年経っちゃって、でもテレビでは見かけるし、どっかで引っかかりながら過ごしてたんだけど、久しぶりに会えてビックリした」
「…偶然だったもんね」
「あの瞬間なにもかも蘇った。高校の記憶とか想いとか」
「…うん」
「その後も何度か偶然会って、その度にどうしても気持ちに嘘つかなくなってきてた」
渡辺くんが公園の時と同じようにそっと手を握ってきた。
さっきより少しだけ、ほんの少しだけ強く感じる。
「俺、柿崎さんが好き」
「…」
「高校の時も今もずっと好き」
うそ…。信じられない。
高校のときも？今も？
もしかしたら、って。同じ気持ちなのかな、って。
期待してたけど、でも。
言葉にされたら嬉しすぎて、でも夢みたいで。
時の流れとは裏腹に心臓は早めにリズムを刻む。
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おでん(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。そう言っていただき嬉しいです！ありがとうございます！ (2021年3月4日 7時) (
レス) id: 0eda0cdbe1 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - おでんはんはじめまして！このお話本当に大好きです！今までにないテイストで今後も更新楽しみにしてます(^^) (2021年3月2日 20時) (レス) id: 7b49f138be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おでん | 作成日時：2021年2月20日 21時
