10年越しの君は。２ (青)

両想いだけど ページ43

好きな人に好きだと言われた。
夢？夢なのかな。
嬉しすぎて涙が出てきそう。
っていうかもう出てる。

「…柿崎さん、また泣いてる」
「あは…でも前は恐怖と安堵の涙だったよ」

渡辺くんがまた前みたいに親指で涙を拭ってくれた。

「…じゃあ今は？」
「…え？」
「今はなんの涙…？」

不安そう。でも瞳が揺れている。

「…嬉し涙だよ」

もう止められない。

「私も渡辺くんが好き」
「え…」
「好きな人が私のこと好きって言ってくれたから嬉しくて、涙が止まらない」
「…なにそれ」
「…」
「可愛すぎる…」

渡辺くんが握ってる手を少しだけ引っ張って、
もう片方の腕で私を包んだ。

今抱きしめられてる？！
やばいやばい。心臓の音が渡辺くんに聞こえそうで怖い。

「柿崎さんってやっぱりずるいよね」
「…なにが？」

抱きしめられたまま渡辺くんが言う。
声がすぐ耳元で聞こえて少しくすぐったい。

「あざとい？感じ。でもわざとらしくないし、嫌な感じもしない。俺実は何回もやられてる」
「…そんなつもりないけど」
「だからあざといんでしょ。自分が気付かないうちに人をキュンキュンさせて。ずるいよね」
「…渡辺くんだから言ってるんだけどな…」
「はっ！？」

渡辺くんが驚いて身体を離して私の顔を見る。
直接耳に響いて少しうるさい。

「え、なに？」
「…わざとやってたってこと？」
「…ん？」
「俺にわざとキュンキュンさせるようなこと言ったりやってたの？」
「…よく分からないけど、渡辺くんだから言ってたんだろうし、渡辺くんと一緒だからその態度とかになってたんじゃないのかな」
「…」
「よく分からない！あざといって計算で行動するとかの意味のこと言ってる？」
「…多分それ」
「じゃあ渡辺くんの前で計算なんて出来ないよ！緊張したりドキドキしたりでそれどころじゃない！」
「…俺またやられた」

渡辺くんが脱力した。
降参でーすとか言ってる。よく分からない。


…これって私たちお互い好きと言い合って、両想いだという事は分かったけど、
ここから先はどうなる？
お付き合いとかするのかな？いやでも。
いいの？交際は別問題？迷惑かかるよ？
いやいや、ここまで来といて付き合わないとかある？
とかなんとか頭の中で私が2人いて討論してる。

渡辺くんは恋愛は自由な考え方なのかな。
…芸能活動しながら今まで恋愛はどうしてたんだろう。
考えるだけでちょっと胸が痛むけど、普通に気になる。

全部大切に→←好き

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す