好きなんでしょ? ページ2
「にしても、彩にこんなに良いお友達がいたなんて…最初は、びっくりしたわ。小塚君や黒木君は知っていたけれどね。」
女性は、…彩の母は、独り言のように語り始めた。
若武たちは、彩の顔を見つめながら、じっと聞いている。
「この子は、引っ込み思案で大人しい性格だったから…せっかく授業参観に行っても、自分からは決して発表をしない子だったわ。」
ふっと微笑む、彩の母。
「そんな様子に、イライラしていたの。この子の兄は、積極的で、リーダーシップもあって、友達も大勢いたから、どうしても比べてしまってた。」
穏やかに話すその目じりに、うっすらと涙が浮かんだ。
「失いそうになってから気づく、大事なもの。でも、それじゃ遅かった…。」
ツーと、涙が頬を伝っていく。
若武たちはその言葉を、黙って噛み締めた。
自分たちも、そうだ。
彩のことを大切に思ってなかったわけじゃない。でも、そこにいるのが…自分たちの傍にいるのが当たり前だと、思ってしまっていた。
身近にあるものの本当の大切さに、気づかなかった。
「私は、この子の事なんて、何も考えてなかったのよ。私も、きっと、あの人も。」
あの人…彩の父の事なのだろう。
「だから、本当にあの子の事を思っていたのは…あなたたちなのかもね。」
彩の母は、顔を上げると、若武を、上杉を、小塚を、黒木を、美門を、じっと見つめた。
その、若武たちの、彩に向けて注がれる視線には、深い思いが込められていることに…、気づいていた。
「…………好き、なんでしょ、彩のこと。」
その言葉に、顔を上げる。
驚きのこもった眼差しで、彩の母を見つめる若武たち。
「そうでしょ。」
若武たちは、顔を伏せた。
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美羽 - すごくおもしろかったです。 (2月6日 15時) (レス) @page50 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 涙が止まりません、!こんなに感動するいい話初めてです!これからも応援するので頑張ってください! (11月5日 13時) (レス) @page50 id: b10f41175b (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - ものすごくいい話だと思います。途中で、涙が出て止まらなくなってしまいました。こんなにも感動する話を書けるなんてすごいと思います。全力で応援するので、頑張ってください! (2023年3月11日 20時) (レス) @page50 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 涙の止め方…誰か教えてください……(´;ω;`)ウッ… (2022年7月20日 9時) (レス) @page50 id: 7969a82418 (このIDを非表示/違反報告)
小三 - 後半涙が出てしまい止まりませんでした。面白い?というかなんだろう。感動してしまう作品ですね。 (2022年4月19日 18時) (レス) @page50 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)
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