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1年 ページ1

ただの三人称



真っ白な病室。

眠る少女。

その少女の傍らで、一人の女性が読書をしていた。

時折顔を上げては、少女の顔を愛おしそうに見つめる。



病室のドアが、開いた。

少年たちが、ぞろぞろと入ってくる。

「あら、若武君たち。」

女性は、本を膝に置き、入ってきた若武たちを見つめた。

「珍しいわね。皆さん、お揃い?」
「はい。今日は久しぶりに、皆、時間が開いたんで。」

黒木が、切なげな微笑みを浮かべて答えた。

女性も、少し目を伏せ、微笑む。

「彩も、喜ぶわ。」

そして、若武たちに、椅子をすすめた。

ベッドを囲むようにして、座る若武たち。

全員が、ジッと彩を見つめている。

「若武君、背、伸びたんじゃない?」

女性の問いかけに、若武は、やけに大人びたように悲しく笑った。

「もう、1年ですからね。」



そう、彩が眠り始めて、もう1年がたった。

若武は少し背が伸び、声も低くなり、見違えるほどに変わった。

上杉は、メガネを外し、シャープな線が消えた。

黒木は、相変わらずの甘い表情の中に哀愁のある雰囲気を纏っている。

小塚は、ずいぶんと痩せ、がっしりとした体になる。

美門は、女子のような柔らかい体つきから、少し成長し、男子のような体つきになった。

皆、成長するものだ。



彩以外は。

彩だけは、違う。

いつまでも、中一の、13歳の彩のままだ。

体つきは成長していても、心的には13歳のままで止まっている。

そう、彩が飛び降りた、あの時から。

一度も、目を覚ますことはない。

あの時の状態から、ずっと。

もう、彩は目を覚ますことはないのだろうか。

若武たちは、切ない思いで、彩を見つめた。

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美羽 - すごくおもしろかったです。 (2月6日 15時) (レス) @page50 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 涙が止まりません、!こんなに感動するいい話初めてです!これからも応援するので頑張ってください! (11月5日 13時) (レス) @page50 id: b10f41175b (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - ものすごくいい話だと思います。途中で、涙が出て止まらなくなってしまいました。こんなにも感動する話を書けるなんてすごいと思います。全力で応援するので、頑張ってください! (2023年3月11日 20時) (レス) @page50 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 涙の止め方…誰か教えてください……(´;ω;`)ウッ… (2022年7月20日 9時) (レス) @page50 id: 7969a82418 (このIDを非表示/違反報告)
小三 - 後半涙が出てしまい止まりませんでした。面白い?というかなんだろう。感動してしまう作品ですね。 (2022年4月19日 18時) (レス) @page50 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年4月23日 13時

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