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間に合え ページ42

三人称だけど美門目線



は、は、は、

息を切らして、彩の後を追う。

いつの間にか、視界から消えた彩。

残る匂いをたどり、その道を走った。

先ほどの彩…

まるで夢遊病者のような足取りで、階段を上っていく。

濡れた全身。つりあがった口元。血の気の失せた顔。その瞳には、大きな虚があった。

まるで、今まで信じていたものが一気に崩れ去ったような…

心の支えとしていたものを、一度に失ってしまったような…。

やっとの思いで繋いでいた理性を、何かの拍子で失ってしまったようだ。

走りながら、美門はふと思う。

もしかして、住野と別れたのかもしれない。

苦々しい思いで、顔を歪める。

住野が彩を迎えに来た時の、自分たちは付き合っていると宣言した時のショックは、今でも覚えている。

心が、鋭い刃で何度も突き刺されたかのような痛みだった。

住野の冷たい笑いが、自分に向けられているかのように感じる。

なぜだ、と、彩を責めたかった。問いただしたかった。

しかし、そんなことをしても、何の解決にもならない。自分たちの間にあるひび に、さらに大きな亀裂が入るだけだ。

しかし、若武たちに伝えなかったのは、いい判断だと思っている。伝えれば、間違いなく、彩の家に押し掛けるだろう。学校の前で待ち伏せをするかもしれない。そんな目立つような行為は、何としてでも避けたかった。

それに、美門は気づいていた。住野が、本当に彩を愛していないことに。

ただのお遊び気分で付き合っていることに。

しかし、知っていながら、どうすることもできなかった。

何か行動を起こせば、必ず、彩に面倒なことを押し付けることになる。

知っていながら、どうすることもできない苦しみに、美門はもだえ苦しんだ。

しかし、決して、表面ではそのことを見せない。少し様子がおかしかったかもしれないが、勘弁してほしい。そうなっても、仕方がない状況なのだから。

しかし、住野と彩が別れたとなると……

彩が別れよう、ということは、まずないだろう。今の彩は精神的に不安定なようだし、なんでもいいから支えを求めようとするのも、うなずける。その支えを、自ら手放すなことをするだろうか?いや、ありえない。

すると、住野から切り出したのか…

美門は、さらに足を速める。

この方向は…。いやの予感で、胸がいっぱいになる。この漂う香りが、彩がどこにいるかを表しているのは、一目瞭然だ。

やばい。

間に合え……!

笑顔→←触れるな



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ひかり(プロフ) - はじめまして。ひかりといいます。前々から何回も読ませてもらっています!表現がとてもきれいで大好きです。私も最近2次創作を書き始めたのですが、そんなにうまくは行きません。尊敬です!! (2020年8月25日 18時) (レス) id: 4da98787a4 (このIDを非表示/違反報告)
nonoka(プロフ) - 読み進めるうちにどんどん涙が溢れて止まりませんでした。完結編も読ませていただきます。 (2018年4月5日 22時) (レス) id: 43665d2016 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - アーヤ、七鬼君じゃなくて忍って呼んでいますよ? (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - ページ一枚目の若武の漢字が若竹になっていましたよ。あ、若武の武が竹になっていたと言うことです。 (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
Ryu'zyu♭ - すごく悲しくなって、涙が出そうになりました(泣) (2018年2月7日 17時) (レス) id: 049c72f8cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年4月9日 18時

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