嘘 ページ39
教室の前に、ついた。
勢いよくドアを開けようと、取っ手に手をかける。
瞬間、聞きなれた声が耳に飛び込んだ。
「どうだ、斗真。賭けは、俺の勝ちだぜ。」
え…?
ピタ、と、動きが止まる。
全身が耳になったかのように、その声がよく聞こえてくる。
ゆ、う…?
賭けって、なんのこと…
クラスメートの水谷斗真の舌打ちと、悔しそうな声。
「まさか、本当に優が立花を手に入れるとは、思わなかったぜ。モテる奴は、いいよな。」
「当たり前。俺に手に入れらんねー奴なんか、いねーんだよ。」
住野の、鼻高々といった声。
優、今なんて…
聞きたくない、聞きたくない。
彩の本能が、そう叫んでいる。
しかし、住野はそんなことも知らず、呑気に喋りだした。
「あいつ、両親が離婚したんだよな。だから、精神状態が不安定なんだよ。そこに付け込んだわけ。」
ヒュ〜と、尻上がりの口笛をひく水谷。
「さすが、優。女子のことを、よく分かってらっしゃる。」
「だろ。」
彩は、呆然としたまま、そこから動けなかった。
あまりにも…ショックが大きすぎる。
「あいつ、愛がほしーんだよ。自分はこの世に必要なの?だれからも必要とされてないんじゃないの?私を愛してくれる人はいないの?」
わざと、声を高くして言う住野。
ぎゃははははは、と、笑い声をあげる。
「それで、俺が愛してあげるって言った時の顔。最高だぜ。それにあいつ、前、美門と付き合ってただろ。Kzとも遊んでるらしーし。ちょっと、からかってみたかったんだよな…。」
何、それ。
思考停止した彩の頭の中で、さっきの女子たちの声が響いた。
゛あんたなんか、ただのお遊びなんだよ。″
゛優があんたなんかを好きだ、なんて思ってんの?″
゛あんたみたいに暗い子を、優が好きになるわけねーじゃん。″
「それに、立花って、まあまあ美人だろ?」
「あー、わかる。でも俺、もっと明るそうな子がいいんだよな。」
「ま、俺なら、美人ならだれでもオッケ。でも、ちょっと飽きてきたわー。だってあいつ、全然笑わねーんだぜ?笑わねー奴なんて、俺、嫌いだよ。」
嫌いだよ、嫌いだよ、嫌いだよ…
住野の無情な言葉が、エコーのように彩の頭に残る。
嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘…
胸が詰まる。
優が、私を好きじゃない?
私を愛してくれていない?
愛してくれるって言ったのは、嘘だったの…?
信じられない………
145人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひかり(プロフ) - はじめまして。ひかりといいます。前々から何回も読ませてもらっています!表現がとてもきれいで大好きです。私も最近2次創作を書き始めたのですが、そんなにうまくは行きません。尊敬です!! (2020年8月25日 18時) (レス) id: 4da98787a4 (このIDを非表示/違反報告)
nonoka(プロフ) - 読み進めるうちにどんどん涙が溢れて止まりませんでした。完結編も読ませていただきます。 (2018年4月5日 22時) (レス) id: 43665d2016 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - アーヤ、七鬼君じゃなくて忍って呼んでいますよ? (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - ページ一枚目の若武の漢字が若竹になっていましたよ。あ、若武の武が竹になっていたと言うことです。 (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
Ryu'zyu♭ - すごく悲しくなって、涙が出そうになりました(泣) (2018年2月7日 17時) (レス) id: 049c72f8cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ