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やめろ ページ38

三人称だけど彩目線

「お前、うざいんだよっ!」
「マジ、死ね。」
「自分が何してるか、わかってんの?」

ザバアアアアアァァァ

頭から、水をかけられる。

ポタ、ポタと、雫と落とす彩。まるで、今外で降っている雨に、まともに濡れたかのようだ。

体中、寒さに震える。

しかし、彩は、何も言わずにただ俯いていた。

「なんか言えよっ!」
「喋れないわけ?」
「ありえねぇ。」

ギュッと、口を紡ぐ。

耐えろ、耐えろ、耐えろ。

必死で、自分に言い聞かせている。

今や、住野ファンからのいじめは、直接的なものになっていた。

こうして放課後、トイレに引きずり込まれ水をかけられるのも、一度や二度ではない。

その度に、うざい、死ね、消えろ。

そんなに、私はうざいの?いらない存在なの?誰からも必要とされていないの?

そんなことを思っては、絶望する。

「てかさ、ほんとに優があんたなんかを好きだ、なんて思ってんの?」

その言葉に、顔を上げた。

彩の瞳に、けばけばしい顔をした女子たちが映る。

どういう、意味…?

「あんたなんか、ただのお遊びなんだよ。」

え?

「すぐに捨てられるに決まってるっての。」

なんて…?

「あんたみたいに暗い子を、優が好きになるわけねーじゃん?」

は…

「さっさと、別れれば?」
「マジ、それ。」

やめろ…

「何よ、その目。事実じゃない?優は、お前なんか好きにならない。」

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ__

「お前なんか」
「やめろっ!!」

彩は、女子たちをきっと睨んだ。

その憎しみの籠った眼差しに、竦みあがる女子たち。

「ちょ…なんだよ!」
「それ以上言うなっ!!」

彩は、頭を抱えると、トイレから飛び出した。

服が水分を含み、信じられないほど重くなっている。

しかし、彩は走った。

服の事なんて、どうでもいい。

重くったって、かまわない。

教室では、いつものように、優が待っているはずなのだ。

私を愛してくれる人が。

いつものように、あの笑顔を見せて。

しかし、彩は、あの笑顔が嫌いだった。

自分がどう笑えば、どの角度から見られれば、どう口角を上げればカッコよく見えるのか、計算されたような、まるで作り物の笑顔だった。

自分に、心の底から笑顔を見せられていない。そう感じる。

しかし、その思いは、気づいた瞬間にしまい込んだ。

そんなことはない。私の気のせいだ。

優は、私を愛してくれている……絶対に。

嘘→←私は知っている



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ひかり(プロフ) - はじめまして。ひかりといいます。前々から何回も読ませてもらっています!表現がとてもきれいで大好きです。私も最近2次創作を書き始めたのですが、そんなにうまくは行きません。尊敬です!! (2020年8月25日 18時) (レス) id: 4da98787a4 (このIDを非表示/違反報告)
nonoka(プロフ) - 読み進めるうちにどんどん涙が溢れて止まりませんでした。完結編も読ませていただきます。 (2018年4月5日 22時) (レス) id: 43665d2016 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - アーヤ、七鬼君じゃなくて忍って呼んでいますよ? (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - ページ一枚目の若武の漢字が若竹になっていましたよ。あ、若武の武が竹になっていたと言うことです。 (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
Ryu'zyu♭ - すごく悲しくなって、涙が出そうになりました(泣) (2018年2月7日 17時) (レス) id: 049c72f8cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年4月9日 18時

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