気持ちの問題 ページ4
彩は、嬉しそうに、上杉は、半ば尊敬の気持ちを込めて、その後姿を見送った。
「すげーよな、あいつ。」
「え?」
上杉は、後頭部で指を絡み合わせながら、背もたれにもたれた。
「力強く、それでいて、押しつけがましくない。相手に力を与える言い方って、まさにそれだと思うんだよな。」
「……うん。」
「俺には、そんな言い方、できないからさ。」
まぶしそうに、目を細める。
そう。自分には、そんな言い方、絶対にできない。
彩に力を与え、笑顔にするなんて、自分にはできるんだろうか…
「人それぞれだよ。」
「…え?」
驚いて、彩を見る。
彩は、笑顔で、真っすぐと、自分を見ていた。
「小塚君には、小塚君の言い方がある。同じように、上杉君の言い方だってあるよ。
小塚君の言い方は誰にだって伝わる、優しい言い方で、上杉君はちょっとぶっきらぼうだけど、上杉君をよく知っている人にとっては、その分、人一倍、気持ちが伝わるよ。
どっちのほうが、なんて、きっとないと思う。」
「立花…。」
その言葉に、やられた、と思った。
「…そうだよな。言い方なんて、関係ないよな。」
「うん。要は、気持ちの問題じゃない?」
そこまで言われて、上杉の顔に、自嘲的な笑みが浮かぶ。
逆に慰められて、どうするんだ俺は…。
「そっか。」
絡めていた指を下ろし、立ち上がる。
そして、出口に向かう途中、通りざまに、彩の頭に、パサ、と、手を置いた。
励ますように、優しく。
「………頑張れよ。___応援してっから。」
「…うん!ありがとう、上杉君。」
彩が、いつものように、にっこりとほほ笑んだ。
「…別に。」
やはりぶっきらぼうな言い方をしてしまう。
…でもいいよな、気持ちの問題だ。
彩に笑顔を与えることができたかと思うと、ちょっぴりうれしくなる上杉だった。
しかし、この時は________
上杉は________いや、誰もが知らなかった。
予想もしなかったのだ。
この後起こる、悲劇のことを。
知っていたのは__________________
カミサマダケ。
145人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひかり(プロフ) - はじめまして。ひかりといいます。前々から何回も読ませてもらっています!表現がとてもきれいで大好きです。私も最近2次創作を書き始めたのですが、そんなにうまくは行きません。尊敬です!! (2020年8月25日 18時) (レス) id: 4da98787a4 (このIDを非表示/違反報告)
nonoka(プロフ) - 読み進めるうちにどんどん涙が溢れて止まりませんでした。完結編も読ませていただきます。 (2018年4月5日 22時) (レス) id: 43665d2016 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - アーヤ、七鬼君じゃなくて忍って呼んでいますよ? (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - ページ一枚目の若武の漢字が若竹になっていましたよ。あ、若武の武が竹になっていたと言うことです。 (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
Ryu'zyu♭ - すごく悲しくなって、涙が出そうになりました(泣) (2018年2月7日 17時) (レス) id: 049c72f8cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ