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美門? ページ2

悩みがあるなら、話せばいのに。
誰かに打ち明け、楽になればいいのに、どうして彼女は、それを拒むのだろう。

しかし、そういったところが彩の一つの美点であるのも、事実だった。

上杉は、テーブルの下で、強く、拳を握りしめる。

「美門。立花に、何をした?」

彩の涙がまだあまり乾いていないこと、二人がほぼ同時に入ってきたこと、
彩の涙について美門が何も聞こうとしないことから、二人がカフェテリアに入ってくる前に
接触していたことは、明らかだった。

答えようによっては、ただじゃおかない!と、美門を強く睨む。

皆も、同じように美門を見た。

美門は、それでも、困ったな、というように微笑んだだけだった。

慌て始めたのは、彩。

「あの、上杉君。翼は、何もしてないよ…。」
「嘘つけ。」

冷ややかなその声には、怒りが滲み出ている。

気に入らなかった。彩が、あからさまな嘘で、美門を庇おうとしたことが。

しかし、そういう子でなければ、上杉はよほど好意を抱かなかっただろう。

この強い矛盾には、自分でも呆れるしかない。

彩は、今までに聞いたことのない上杉の声に、当惑し、思わず黙り込んだ。

突然、若武がバン!と椅子を蹴り立ち、ツカツカと美門の席まで歩み寄ると、その胸ぐらをつかみ上げた。

「お前、アーヤに何をしたっ!」

若武の罵倒を浴びても、美門は、まったく表情を崩さない。

「若武、やめてっ!!」


彩の、鋭い一声が飛んだ。

だれもが、今まで聞いたことのないほどの大きな声に、言葉をなくした。

彩は、その目に涙をため、必死で若武に訴える。

「お願い、若武………やめてよ…。」

シ………ンと、静まり返るテーブル。

若武は苦々しげに顔をゆがめると、美門をつかんでいた手を放し、彩をじっと睨んだ。

「ああ、そうかい。俺たちに話せなくて美門に話せることなら、いくらでも話しとけば?」

そう吐き出すように言って、背を向け、カフェテリアを出ていく。

「若武。」
「やっぱ、あいつ、ガキだな。」

小塚が悲しそうに、上杉が舌打ちをしながら、出口を見つめた。

彩は苦しそうにうつむき、黒木は何かを考えながら席にもたれ、美門はため息をついた。

「馬鹿だな、俺…。」

テーブルに肘をつき、頭をのせる。

「美門。説明してもらおうか。」

黒木が、腕を組んで、美門をじっと見据えた。

小塚も、そして上杉も、美門をじっと見る。

悩み事→←涙の痕



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ひかり(プロフ) - はじめまして。ひかりといいます。前々から何回も読ませてもらっています!表現がとてもきれいで大好きです。私も最近2次創作を書き始めたのですが、そんなにうまくは行きません。尊敬です!! (2020年8月25日 18時) (レス) id: 4da98787a4 (このIDを非表示/違反報告)
nonoka(プロフ) - 読み進めるうちにどんどん涙が溢れて止まりませんでした。完結編も読ませていただきます。 (2018年4月5日 22時) (レス) id: 43665d2016 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - アーヤ、七鬼君じゃなくて忍って呼んでいますよ? (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル - ページ一枚目の若武の漢字が若竹になっていましたよ。あ、若武の武が竹になっていたと言うことです。 (2018年4月4日 19時) (レス) id: 674d35aaa1 (このIDを非表示/違反報告)
Ryu'zyu♭ - すごく悲しくなって、涙が出そうになりました(泣) (2018年2月7日 17時) (レス) id: 049c72f8cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年4月9日 18時

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