四十八話/異能力の喪失 ページ48
約三年間、片時も離れず共にあった異能力の喪失。それ即ち、Aには誰も、何も救えない。その事実が今、この瞬間から決定したことに等しい。
故に、Aにはもう何も救えないし、何も、出来ない。
敦や国木田、太宰等と共に最後の時を迎える以外に道はない。
ーーとは、少々永井Aという少女を軽く見積もり過ぎている。
数打ちゃ当たる精神のAは、未だ希望を捨ててなどいない。
「ーーっ!」
皆を、敦を助けなければという思いに躰を突き動かされ、考えるより先に、Aは走り出していた。
目的地はこの部屋の最奥、爆弾のある場所。
勿論、所有者に別れも告げずに突然消えた異能力に思うところはある。
何故、消えたのかという疑問は有るし、その事にショックが無い訳でもない。
ーーでも、命には変えられないから。
「敦君!」
足が竦んで動けないのか、爆弾の隣に座ったままの人質の女子高生。彼女を敦に押し付ける。
「ーーーー」
突然押し付けられた少女に、敦は困惑顔で叫んでいるが、何も聞こえないし聞きたくない。そのまま、叫ぶ敦にAは取り合わず、外套を脱いだ。
手触りのいい厚い黒外套。
それで、残り七秒と表示している爆弾を包み、上に覆い被さる。
ーーこれで、人が唯覆い被さるより被害を抑えることが出来る。
「ーー!」
その自分の姿に周りがざわついたのが、何となく判った。
理由は、考えるまでもなく判る。
爆弾の上にAが覆い被さったのもあるだろうが。
敢えてもう一つ、理由をあげるとするならば、Aが下着姿だからだろうというのは自信過剰が過ぎるだろうか。
ーー七秒後には肉片になるAにはもう関係の無い話だが。
「Aちゃん!」
ふと、そんなことを考えていたAを聞き慣れた声が呼ぶのが、聞こえた。聞こえてしまった。
そして、その声に反応するより先に、Aの躰を誰かが引っ張ったのが分かった。
「早く離れて!逃げて!!」
声の主は真上にいる為、顔は見えないが声で判る。
ーー敦だ。
「ーーん、く!」
呼び掛けても頑なに離れようとしないAを敦は爆弾から引き剥がそうとする。
だが悲しいかな、その努力も虚しく、今回ばかりはAも敦に一歩も譲らない。
「ーーっ」
何故。敦が来てしまっては、Aが今此処に居る意味が無くなってしまう。如何して、逃げてくれないのか。如何して、敦を守って此処で死なせてくれないのか。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時