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四十九話/入社試験 ページ49

「ーー!」


と、そこで爆弾が発する音の中で後ろから三番目の音が発された。つまり、残された時間は一秒。
何時の間にか、Aを引っ張っていた敦の手の感触も無くなっている。


あの、白髪の少年。彼の無事を、安寧を、それだけを願ってAが体の力を緩めた。
その、瞬間だった。


「うおおおおおお!!」


「ーーんっ!?」


予想外の横からの衝撃。それに、爆弾はそのままでAだけが綺麗に吹っ飛ばされる。
正面、そこには爆弾に覆い被さる敦がいて。


「駄目!」


「莫迦!」


Aと太宰の声が重なった。
瞬間、爆弾から終了時間のお知らせの合図。


「ーーぁ」


如何して、永井Aという人間はこうも愚かなのだろうか。目の前で死ぬ。大事な人が。他でもない永井Aという人間のせいで。救えないほどの能無しで、愚かだから。神は器に不釣り合いな中身を注ぎ込んだのーーーー。ーーー。ーー。


「ーー。ーー。ーー。あ、れ?」


何時まで経っても爆発が起きない。その事実に遅れて気づき、Aと敦は同時に顔を上げた。
正面、並んだ二人の視界に映るのは、左から国木田、太宰、そして爆弾魔の姿。


「やれやれ……莫迦とは思っていたがこれほどとは」


「彼等は自`殺愛好家の才能があるね。ーー白、か」


すっと目を細める太宰の頭に、顔を赤らめ乍ら国木田が鉄拳を叩き込む。
その二人の様子に、Aは慌てて外套を羽織った。


「ーーーー」


「へ?………え?」


「ああーん兄様ぁ!大丈夫でしたかぁぁ!?」


「痛だっ!?」


混乱するAと敦を他所に、人質だった筈の女子高生が、爆弾魔へと猛速度で突進する。


「いい痛い、痛いよナオミ。折れる折れるーーって云うか折れたァ!?」


「……へ?」


「兄様……?」


訳が、判らない。頭に空白が生じて、無理解で胸中が満たされる。
と、そんな二人に後ろから「小僧、娘」と声が投げ掛けられた。


「恨むなら太宰を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」


「ーーぁ」


国木田の言葉に、或る一つを残して、それ以外の点と点が全て繋がる。


「そう云うことだよ。敦君、Aちゃん。ーーつまりこれは」


太宰はそこで言葉を区切り、指を立てると、


「一種のーー入社試験だね」


「入社……試験?」


「ーーっ」


なおも困惑し続けている敦と、嵌められた事実に歯噛みするA。二人に、再び声が掛けられた。

五十話/意外と重い中島敦→←四十八話/異能力の喪失



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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時

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