二十二話/誘ったのは誰でしたっけ ページ22
「太、宰さん」
Aを窮地から救ったのは蓬髪に砂色外套の男、太宰だった。
美丈夫は虎に追われている最悪な状況の中、済ました顔で此方に笑い掛けてくる。
「逃げるって、これどうす」
後に言葉は続かなかった。虎が目の前の床を叩きつけたからだ。その規格外の衝撃に床が大きく窪み、周りに亀裂が走る。
「あんなの真面に食らったら……え!?」
瞬間、太宰が繋いでいた手を離し、後ろに下がった。そんな太宰の行動に、虎の前に一人立ち尽くす形となったAは声を上げた。
掌が外気に晒され段々と冷たくなっていく。そして、それに合わせて自分の体も冷たくなっていくような感覚を感じる。
「Aちゃ〜ん頑張れ〜!」
「ちょ、太宰さん!?わっ!!」
Aは振りかぶって叩きつけられる虎の手を必死に避けた。最早、太宰の場違いな応援等耳に入らない。
「ーーっ」
兎に角足を前へ前へと動かして虎から逃げようと走る。こんな時に使える便利な異能があればいいのだが、生憎Aはそんなものは持ち合わせていない。
「誰か……誰か!助けて!!」
助けを求めて逃げ回るが顔も知らない誰かどころか直ぐ近くにいる筈の太宰ですらも助けに来ない。ーー何故だ。誘ったのはお前じゃないか。
「ーーっ!!」
そんなAの頭に浮かんだ疑問は再度振り被られた虎の手によって吹き飛ばされる。
振り被られた虎の手に気づいたAは
その瞬間を見計らい、Aは仕方なく積み重ねられた木箱の裏に隠れた。
だが、そんな浅慮な考えが嗅覚が鋭い虎に通用する筈がなく、ものの数秒で見破られ、虎は木箱ごとAを潰さんと咆哮する。
「ーー!!」
異変に気づいたAは素早く違う木箱の裏に移動し、息を殺した。
それから二秒も立たないうちに先程Aが隠れていたところから何かが潰される音が鳴った。次々と木箱が吹っ飛んでいく。
ーー若し、先程此方に移動していなかったらと思うと鳥肌が立つ。
そんなAを横目に太宰は云ったのだ。
耳に入れた瞬間、一生忘れないと、そう決めた一言を。
「こりゃすごい力だ。人の首くらい簡単に圧し折れる」
信じられない。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時