遠き日、消えた君【WT】

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「紹介するよA、これが玉狛のニューフェイスだ」

わんわんと桐絵ちゃんが泣いて、レイジさんとも再会の喜びを分かちあった後、迅は私に彼らを紹介した。

「メガネくん達にも紹介してあげる。旧ボーダーの月刀Aだ。最近まで近界にいた」

「近界に…！？」

「よろしく三雲くん、訳あって近界に居てね。5年ぶりに戻ってきたんだ」

「5年も近界に……よろしくお願いします……」

迅から聞いた話だと彼はトリオン量は少ないものの中々面白い人物らしい。いい人そうな彼とゆっくり握手を交わした。

「君が空閑遊真くんだね、よろしく」

「うむ、よろしく」

隣に立つ彼は空閑有吾さんの子供だと迅は言った。戦争を経験したもの、私と似ているところがあると、迅は言っていた。

「千佳ちゃんだね、よろしく」

「は、はい！」

小さな手を取る。彼女のトリオン量は膨大なものらしい。言ってはなんだが戦闘員には見えないほど、優しそうな子達だと思った。

「それから元々本部に居たんだけど玉狛に配属になった烏丸京介、オペレーターの宇佐美栞」

「どうも」

「よろしくです〜」

2人とも握手を交わす。


「それからここにはいないがネイバーのヒュースって奴がいる。ヒュースと陽太郎、林藤支部長は出かけててゆりさんとクローニンはスカウト旅に出てる」

「スカウト旅……」

私がいた頃のボーダー、つまり旧ボーダーの人達は随分と少なくなっていた。けれど、ここは未来に歩き出していた。

「もう〜！迅はAさんが帰ってくるって知ってたわけ！？言いなさいよね！」

桐絵ちゃんは軽く怒りながら迅に詰め寄る。迅は少し眉を寄せて、困ったように笑っていた。

「いや、今朝まで見えてなかったよ」

「ふ〜ん、まあいいわ！Aさんが5年ぶりに帰ってきたんだから今日はご馳走よ！皆手伝いなさい！」

はい、とそれぞれが返事をして玉狛支部は賑やかになる。暖かい、温もりに溢れる場所。5年前の皆で暮らしていた場所。

「部屋を整理するといいA。お前の部屋は残してある」

肩をぽんと叩かれて、振り返るとレイジさんが微笑んでいた。

「わたしの、部屋」

「そうだ」

足は無意識に動き出していた。記憶の中にある、私の部屋へ。

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