俺はこの温もりを捨てたくない ページ22
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監督さんの部屋からAが出てきた。
身体を冷やすわけにはいかないかない。
少しでも体温を分ける為に手を握った。
「どうだった」
「色々と拗れてた」
「監督さんは何かしら拗らせないと気が済まねぇのか」
「同じ事思った。…真澄も、慣れないことばっかりだから遠慮してたみたい」
「なるほどな。それにしても月一か…」
「真澄も相当と我慢してたみたい。すごい。いづみは一人でしてたみたいだけど」
「そもそもなんで、そうなったんだ。」
「詳しい事は聞かなかったけど、最後の最後でいづみが拒んじゃって…っていうことらしい。恥ずかしいのと、反射的に言ってたんだと思う」
「そういう事か」
部屋に入る。
妊娠したこいつにロフトを登らすわけにはいかない。
10分で下に敷いた布団。少し不格好だが、仕方がねぇ。
Aに腕枕をして、毛布をかけて暖まる。
「んで、最近は具合悪くて相手に出来なかったけど、左京1人でしてたの?」
「ぶっ、…なんで急にそんな事を聴いた。中坊がいるんだぞ」
「莇寝てる」
「………はぁ。お前が気にする事じゃない。お前を近くで見ていたんだ。俺よりも半端じゃねぇくらい辛い思いしてるだろ」
「…安定期になったらする。それまでは…ごめん」
「気にするなって言っただろ。今はそっちよりもお前の方が心配だ。…柄じゃねぇ事は分かってる」
「うん…。ありがとう左京」
「ああ。…お前が一番大切だ。…だから、俺の為にお前は自分をもっと大事にしろ」
「…したいけど多分無理」
「おい」
チッ。これだからAは…。
これからの事を考えて少し不安になった。
子供を産むことに躍起になり過ぎる事だけは辞めてほしい。
寝ながらこいつを抱き締めた。
それから覚悟を決め、身体を離してAを見つめた。
「…はぁ、子を思うあまり自分を犠牲にする母親がいると聞いた事がある。」
「…」
「子を産んでもお前がいなけりゃ意味が無い。お前が居なくなるくらいなら、子供なんて要らねぇ。子供なんかいくらでもできる。…だから無理に気負う必要は無い」
「…うん」
「お前を犠牲にして得る幸せは幸せじゃない」
「…うん」
素直に聞き入れるAをまた抱き締めた。
首元にある頭を撫でる。
手から零れる落ちる程にさらさらな髪の毛。触り心地がいい。俺の半身。
俺は不器用だ。それに素直じゃない。だから小っ恥ずかしい事は言えねぇ。
だが、─────。
その為なら俺は何でもする。
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勘久朗 - 左京さんをパパにして至さんを弟にして真澄を彼氏にしたい。 (2019年11月15日 23時) (レス) id: 9175532e2c (このIDを非表示/違反報告)
勘久朗 - ヤバイ・・・好き・・・吐血する・・・真澄も左京もかっこよすぎ・・・真澄も左京も純愛・・・嫁にしたい・・・てか至さんの世話したい・・・(通常運転) (2019年11月15日 23時) (レス) id: 9175532e2c (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 「解釈の一致」ってこういう事なんだなって思いました。尊いおぶ尊い。最高です。そして秋組もかわいい。読んでて心がきゅんきゅんしました。ありがとうございます。 (2019年3月19日 3時) (レス) id: ee1f3c5304 (このIDを非表示/違反報告)
しゆにだ(プロフ) - あぁ、左京さんとこんな恋したい。パパほしい。ほんとに夢のようだった ありがとうございました!!これからも頑張ってください! (2019年1月16日 21時) (レス) id: cc0fafd6d2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきゆき - 左京さんの優しさとかっこよさ、満開カンパニーのみんなの優しさが伝わってくる小説でした!更新頑張ってください!応援してます! (2018年11月28日 1時) (レス) id: 07636e0f96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡椒 | 作成日時:2018年4月22日 1時