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曇天に幸あれ・発色 ページ32

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それは、

彼女にとっての最適解。

それは、

ささやかな感謝の手向け。

――――――――



涼風と陽気が交じりつつある季節。

ランク戦シーズンを間近に控えた頃、Aは1つの悩みに思考を惑わされていた。

それは、戦績ではなく。
周囲の気遣いや優しさでなく。
更には、影浦ですらない。

勿論、以上にも心を燻るものはあったのだが…、
Aは今、己の気持ち次第ではどうにもならない悩みを抱えている。



A「って言ってもなあ」
一瞬でも思考に穴が開けば、ふと思い出してしまうのだ。



A「……うん、やっぱ同性に訊くほうが『普通』に見えるよね」
自室のベッドで1人頷くと、寝転んだまま端末を手に取った。






翌日。


「城岩さん!」
おーい、と手を振られれば、Aも控えめに手を振り返す。

秋晴れの下の駆け寄る先には、チームメイトの宇佐美が笑んでいた。

A「ごめんね、ありがとう。また付き合ってもらって」
宇「いえいえ、いくらでも呼んでくださいな!」

近くの同性、といえば彼女。
どちらが年上ともつかぬ関係性であれ、Aの中では貴重な存在になっている。

栞「それでまた、今のご時世レアな悩み事をお持ちのようで」
A「レア…?」



栞「そうですとも!お給料の使い道、色々ありますよ!」



ドン、と集中線の掛かりそうな具合でメガネを押し上げ、不敵に笑う。
そう、Aは給料の使い道を考えていたのだ。
A級となり固定給が入れば当然、出来高制のそれよりも多くなる。


A「もちろん、使うよ。ご飯とか、必要なものに。でも」
腕を組み、唸る。
A「荒船は、映画を観るって」
栞「ほほう」
A「カゲも、漫画を買うって。
それって、生活に必要じゃないものだよね」
栞「ふむふむ。つまり、娯楽に使いたい、と?」

ゆっくり、少しずつ、燻りを吐き紡ぐ。
宇佐美はそれを、持ち前の理解力で解きにかかる。

A「娯楽…じゃなくてもよくて、うーん、いい使い方がしたい」
栞「うむむ、娯楽もいい使い方だと…あっ」

唐突に、ぱっと閃きの顔を見せた。
そのまま緩やかに、口角へ企みを含ませる。

A「?」
栞「城岩さん、一緒に風間さんの誕プレ買いに行きません?」
A「誕……」



ぴーん。



それだ。

そう言いたげなAの両手と両目は、
胸に広がる温かさを溢したかのようだった。

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(プロフ) - この小説大好きです。頑張ってください! (2020年3月9日 22時) (レス) id: 3553c63234 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 続き気になります!更新頑張って下さい。 (2017年8月1日 10時) (レス) id: 05ce5fca4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:未紺碧 | 作成日時:2016年6月27日 18時

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