《第1弾》ブーゲンビリア〜M.Tasuku ver〜

分かってるけど ページ19

あれから何ヶ月かが過ぎた


何回もスマホを見る

晩御飯を作ってスマホを見て、お風呂から出てスマホを見て、寝る前にまた見る


ピコンっとなるLINEの通知音に跳ね起きてアプリを開くと金城さんからでため息が出る


仕事だから仕方なく既読を付けて返信を返すとやっぱり既読スルー


はぁ


せめて了解とか返してくれてもいいのにな



こんな金城さんでも奈那は好きなんだなと、思いつい冷たくしそうなのをいつも抑える


それから今日も何回も何回もスマホを確認するけど肝心のあの人からはなんの連絡もなくて


ため息しか出ないよ


翼とケンカしてから二週間


もちろん私も悪いけどなにもそんなに怒らなくてもいいじゃん


拗ねてしまった私は謝るタイミングを逃してしまい二週間も翼を避けてきた


それでも毎日連絡来ないかなって待ってるなんて馬鹿みたい


翼と話さなくなってなんとなく足りない日々

どんなに辛くても、仕事に集中してても、笑ってても頭の片隅には翼がいて


「仕事終わったら翼に会いたいなぁ｣
とか
「翼にも教えてあげたいな｣

なんて思ってる


奈那は何も聞いてこないけどきっと気がついてる

あえて聞かないんだ

私も奈那には心配かけなくないから話さない


はぁ



その日たまたま情報課に用事のあった私は山ほどある資料を抱えて行った


エレベーターから降りてちょっと歩いた所から翼の席が見える

翼は不意に立ち上がってこちらに来てる


思わず隠れなきゃなんて思ったけど足が動かなくてただ見つめていると


ドシンっと誰かがぶつかってきて

「邪魔だ｣


金城さんだった



「す、すみません｣


バサバサっと音を立てて落ちてく資料


全てがスローモーションにみえた


ヒールだからバランスが取れなくて

世界が傾いた


と思ったけど傾いているのは私の方で


もう無理だ

ギュッて目を瞑ってもどこも痛くなくて

代わりに誰かが私を支えてくれていた


息が止まってしまった私にはそれが誰の匂いかはわからなかったけど

一瞬翼かな

なんて期待した


そっと目を開けるとそこには松本くんがいて


「あっぶねー。大丈夫ですか？｣


私から手を離してバラバラになった資料を拾ってくれる松本くんだった


「あ、ありがとう｣


「怪我なくて良かったっす

それじゃあ｣

爽やかに去っていく後ろ姿を見てふと視線を感じた


そこを見つめると翼

そこにたったまんま私の方を見ている


…そこにいるなら助けてくれてもいいじゃない

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