《第2弾》ブーゲンビリア〜M.Tasuku ver〜

1歩前へ ページ7

自動ドアを抜ければそこはもう夜の街で、高いビルがピカピカと光っている

空に星はあるだろうけど、街灯が眩しすぎて見えない

腕に填めた時計の針が指すのは10で、少しだけあるヒールで足は痛くなっていた
寄り道もそこそこ、駅までの道のりを1人で歩く

隣をすれ違う人の隣には誰かがいて

腕を絡めたり、輝くような笑顔を見せている

時には細い路地の向こう側で暗闇に紛れて抱き合ったり、キスをする様子も見受けられる

この街ではそれが当たり前。

慣れてしまった大人の世界だけど今日はやけに目につく

白と桃色のレースのスカートを夜風に乗せながら楽しそうに前を歩く女の子

その隣の男性は慈しむように優しげに彼女を見ていて至極羨ましくなる


あ〜ぁ、翼に会いたいなぁ

ここの所私の帰りが遅くて

私が帰るまで寝ないで待っててくれるけど
美味しいご飯も温かいお風呂も待ってるけど

1番欲しいものは、まだ。

…仕事が忙しいのを気にしてくれてるんだよね

でも、寝れないのは辛いけど
翼不足はもっともっと辛いの

駅はこんな時間でもそこそこ人がいるから寂しくはない

電車が来て人の流れに沿って

車内は広く酔っ払いが床で寝ている以外はいつもと同じ

そっと酔っ払いから離れたドア付近に立つ

流れる景色はどこまで行っても暗くて
段々とキラキラとした光は減って窓を眺めているうちに見慣れた景色が見えてきた

最寄り駅は人が少なくてチラホラ疲れた顔しながらパッパっと歩く

きっとこの人たちにも帰りを待つ人がいるんだろうなぁ

ほら、あそこのケーキ屋さんで2つケーキを選んでいる

顔は疲れで明るくはないけど、後ろ姿もくたびれてるけど

でも、楽しそうで嬉しそうで

私はそれ見て自分の事じゃないけど嬉しくなった

私も、何か買っていこうかな

あと10分もすれば閉められてしまうため急いでみるけど…迷うなぁ
昼間売れてしまったのか残っているのは数少ないけど、それでもその中から翼が好きそうなものを選び出し、会計を済ませる


…喜んでくれるかな

お店の人が売れ残っても勿体ないからとケーキをおまけしてくれて合計3つ入った箱を揺らさないように歩く

曲がり角を曲がれば私の大好きな人が待っている

「ただいま｣

ぺたぺた音を鳴らして翼が出てきて私の荷物を持ってくれる

すっかり忘れてたけど足が痛い

前を歩くグレーのスウェット姿の翼

…スゥェットですらこんなにかっこいいなんてずるい

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