【短編】何時かの物語 -ep02- -BHFFXV- (ページ8)

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# 気が合う者同士 (I) ページ8

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初めてウェルとイグニスが出会ったのは、まだ寒さが残る季節に彼が城へ招集されたからであった

ルシスに初めてやって来た彼女は言葉は話せど読み書きが不十分であったがため、イグニスは彼女の教育係となった

勉学と共に、その他ルシスでの礼儀作法でもイグニスが教え、この国の文化も彼が伝えた

それが数ヶ月経った今、先生と生徒ではなく年の離れた友として、時間があれば互いに情報を交換している

今では常にノクトの傍にいることが難しくなったイグニスにとって、彼女には感謝してもしきれない

「最近ノクトの様子はどうだ？」
「最近、ですか？」

たまたま定期報告で城にやって来た彼女と鉢合わせし、人が通っても邪魔にならない所でいつものように情報を共有する

「うーん、そうですね。少し変わったといえば、イグニスさんが教えてくれたレシピで三食しっかり摂れて、朝は顔色が良いと思われます」
「そうか。なら安心だ」

朝は「食べるのが面倒臭い」と言い捨てて登校するノクトに彼は心配していたのだが、顔色の話を聞くと少し安堵の表情見せる

だがそれも束の間。すこぶる嫌そうに彼女は眉間にググッと皺を寄せる

「…でも野菜嫌いが一向に治らなさ過ぎてイライラします」
「…それは同感だ」眉間が一瞬動いた衝撃で少しズレた眼鏡を、イグニスは中指で押し上げて直す

日中、彼より彼女の方がノクトと会う確率は多い

「ウェリタス。これからも大変だと思うが、ノクトをよろしく頼む」
「はい、任せて下さい。…と言いたいですけど、野菜だけはどうにかしないと……」
「俺もあれには苦戦している。俺達は俺達で色々と模索せねばな」
「ですね。」

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