【短編】何時かの物語 -ep02- -BHFFXV- (ページ1)

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#12-1 神凪の姫ページ1

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故郷テネブラエに帰省し、降り掛かってきた第一の難関に私は少し苦戦していた

「だから、私はルーナ様の従者だって何度言ったらわかるんですか？」
「その証拠が無いのに何言ってんだ、証明書出せ」
「な、無いです」
「じゃあ、帰るこったな」

なんだ、この衛兵は、ふざけてるのか？よくよく見れば軍服も新品だし、新人か？こいつは

かれこれ恐らく二、三十分はこうして目の前の軍人に話しているわけだが、めんどくさいのか城の者に確認もせずに何度も、何度も説明している

それなのにとんだ言いがかりというものを突きつけられている

これだから帝国軍が嫌いなのだ

「もう！それならゲンティアナ様を呼んでくださいよ！それなら確実です！」
「身元もわからんのに城の関係者を呼べるか。子供はとっとと帰れ」

こいつ、何をバカにして言ってるのかと思えば女とかではなく、子供扱いして言っていたのか！？

それに私の堪忍袋もとうとうブチギレ、抑えていた拳を構え、手をパキパキと威嚇して殴る準備を整える

そして殴ろうと手を離した瞬間、振りかぶる事なく何者かによってその手は止まる

「この者は城のものです。お通しなさい」乱闘を止めてくれたのは誰もが見惚れる美女、そしてルーナ様の側近であるゲンティアナ様であった

ようやく現れた助っ人に思わず彼女の名を読んだ時、衛兵は慌てて側へ退いた

「助かりました。ありがとうございます、ゲンティアナ様」
「そんなことより、早くルナフレーナとお会いなさい。貴女との再会を心待ちにしているのは彼女の方よ」

短く返事を返すと私はルーナ様の待つ部屋へ向かう

三ヶ月前、本格的に寒さを増してきた頃に私の異動は決まった

急だった。その上何の目的かも教えられないまま、私はルシス王国へと発ったのだ

当初は入学式からの予定だったのだが、色々と挨拶や準備も兼ねて遅れてしまい、まだまだ慌ただしい中、異国の高校へと入学をした

不安もあったが、こうして報告という名目で定期的な帰省が出来るから文句はない

一際少し目立った扉の前に立つとコンコン、ノックをする

中から幼き頃からの主人の声が聞こえてくる

「ルーナ様」その一言で扉は開き、そのまま優しく抱かれる

その時にフワリと女性らしい、花の香りが漂い、鼻を掠める

「待ってましたよ、ウェル」
「お久しぶりです、ルーナ様」

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