story19 惚れた ページ20
【Aside】
私の肩から血が溢れてく。ふと、土方の方を見ると膝から血を流していた。
そして、土方は足を引きずりコンテナの裏へ。私も同じ方へ走った。
これがダメだった。私達の回りは、敵に囲まれていた。
「残念です。ミツバも悲しむでしょう。古い友人と、妹を亡くす事になるとは。あなた達とは仲良くやっていきたかったのですよ。あの真選組の後ろ楯を得られれば、自由に商いができるというもの。」
それが、狙いで姉上に……
商い──たったそれだけのために、一人の人生振り回そうとしたんだ。
「そのために、縁者に近づき縁談まで儲けたというのに。まさかあのような病持ちとは。姉を握れば、Aさんと総悟くんは御しやすしと踏んでおりましたが。医者の話ではもう長くないとの事。しかも、Aさんはここに来てしまった。非常に残念な話だ。」
こいつはくそ野郎だ。人を人として見ていない。ひとつの道具として見てやがる。
「……はなから俺達抱き込むためにアイツを利用するつもりだったのかよ。」
「姉上を、愛してるのか?」
愛してる。その言葉が聞けたなら、薄っぺらいものじゃなくて本心からのものなら姉上も幸せに……
「愛していましたよ。商人は、利を生むものを愛でるものです。ただし……道具としてですが。あのような欠陥品に、人並みの幸せを与えてやったんです。感謝して欲しいくらいですよ。」
私は、怒りで体が震え出した。姉上の楽しそうな笑顔。優しい微笑み。私の頭に次々と浮かび上がる。
隣で土方がククと笑う。
「外道とは言わねぇよ。俺も似たようなモンだ。……ひでー事腐るほどやって来た。挙げ句死にかけてるときにその旦那叩き斬ろうってんだ。ひでー話だ。」
「同じ穴のムジナというやつですかな。鬼の副長とは、よく言ったものです。あなたとは、気が合いそうだ。」
「──そんな大層なもんじゃねーよ。俺ァ、ただ──惚れた女には幸せになって欲しいだけだ。こんな所で、刀振り回してる俺にゃ無理な話だが。──どっかで普通の野郎と所帯持って、普通にガキ産んで、普通に生きてって欲しいだけだ。ただ、そんだけだ。」
ここで、私も思いの丈をぶつけてやろうか。深く息を吸った。
「姉上は、てめー何かに偉そうに幸せを与えてもらわなくてもだ。元から、総悟とか、こいつとか、近藤さんとかに囲まれて、普通の人よりよっぽど幸せ。そして、土方。私も、惚れた男には、幸せになって欲しいだけだ。」
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作者名:きなこ | 作者ホームページ:https://twitter.com/Kinako_uranai
作成日時:2018年2月5日 13時