有給前夜 (ページ6)

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第四話(一二三目線) ページ6

一二三「…どぽちんおっせぇなぁ〜…」

リビングのテーブル、誰も居ない椅子と向かい合わせ。

…独歩からのメッセージ「今会社出た」と一言だけ送られてきたのは数十分程前だった。

机に突っ伏して、手を前に伸ばした。ただただ「ただいま」という言葉だけを求める。

少しだけ空虚感に苛まれながら、俺っちは椅子から立ち上がった。

……「お迎え」…男の幼馴染がとかめちゃくちゃキモイよな……

一二三(…そう、買い忘れ……買い忘れがあったから…コンビニ行くだけ。)

うん、そうだ…決して独歩ちんをお迎えに行きたいとかそういうのじゃない。…多分。

……いつからだろう、独歩に謎の気持ちを抱いたのは。

独歩の事を考えると、何だか胸の辺りが変な感じになる。
ギュッて、掴まれてるみたいに、苦しくなる…。

…こんな感情抱いたの、初めてだった。

一二三(……よく分かんないな。)

そんな風に頭の中で思考を巡らしている内に、外に出る準備が終わった。

一二三(まぁ……途中で独歩にあっても？俺っち買い忘れた物を買いに行くだけだし？…別におかしくはないよ、ね…。)

ドアを閉め、ちゃんと鍵をかけたのを確認し、廊下を歩く。

…独歩ちん、帰って来るのこれくらいのはず。…今マンションの入り口前くらいだったりして。

…廊下から右手側から見える、都心部の灯がやけにキラキラと輝いていた。

エレベーターに乗り込む、1のボタンを強く押す。

この感情の方程式、きっとこれだけは天才学者でも一生解けることは無い。

…いや、きっと解かれたくないんだ。暴かれたくないんだ。

絶対に、独歩以外の人間には…解かれたくない。

一二三「……恋かな、恋だといいな。」

そう小さく呟いた後、丁度一階に着いた事を知らせる音とアナウンスがエレベーター内に響いた。

エレベーターの扉がゆっくりと開く。

何故かいつも以上に遅く見えた、…スローモーションの様にも思えたんだ。

一二三(…！)

見慣れた幼馴染の顔、疲労感に被われているその表情。

自然と笑みが溢れる。
…俺はその表情に微笑みかけた。

続く