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第四話 ページ6

「あー言い合ってるところ悪いんだけど……」

兄妹の言い争いに水を差すはどうでもよさそうな顔をした太宰治だった。

「そろそろ足をどけてくんない?」
「……邪魔」

治がいうのと同時にぽいっと少年の足を退けるのは治の妹である佑子だった。

気配一つしなかった彼女に少年はギョッとする。そんな彼に一瞥もくせず佑子は兄さん大丈夫?と声をかけている。

「平気。それにしても……ふふ」

まるで少年を馬鹿にするかのような笑みだった。
ぴきっと青筋を立てる彼に太宰は一言。

「君はもう少し牛乳を飲んだほうがいい」

少年の蹴りが太宰の胴体に突き刺さった。かのようにみえた。しかし吹っ飛んだのは佑子で太宰はけろっとしている。

蹴りが太宰の胴体に入る一瞬、佑子が太宰の前に滑り込んだのだ。まさか身を挺してまで太宰を守るとは思っても見なかったのか少年は苦い顔をした。

「君はすぐに感情的になるね。おかげでユウが吹っ飛んでしまったじゃないか」

「……手前ぇ、吹っ飛んだ妹に対して心配する心はねえのか」

「心配?」

不思議そうな顔をする彼は「嗚呼」と言葉がするりと漏れる。

「心配してるよ、もちろん」

感情の読めない顔で薄い笑みを浮かべる彼。
その瞳は底知れぬ闇を彷彿とさせ中也はゾッとした。

「だから君に呪いをかけてあげよう」

「……はっ?」

「僕は君と同じ十五歳でこれから伸びるが君は大して伸びない」

「腹立つ呪いかけんな!」

言うと同時だった。少年の爪先が太宰の顔を蹴り飛ばした。首の骨が鋭く軋んだ。

「痛いじゃないか。僕は痛いのは嫌いなんだけど」

太宰が薄く笑って云った。口の中が切れたらしく唇の端から血液が一筋流れ落ちる。

「だがおかけで思い出したよ。《羊》……この横浜で一大勢力を築く、未成年のみで構成された互助集団だ。

略奪や抗争や人買いの襲撃に対抗するため、少年少女達が集まり自衛組織を作ったのが発端だと聞いた。その組織戦略は徹底した専守防衛。

だが《羊》に逆らう人間は今やほとんどいない。理由は簡単、《羊》の領土を侵した者は誰であれ後で必ず凄まじい反撃を喰らう。

《羊》のリーダーである、たった一人の少年によってね。そうか。君があの重力遣い、《羊の王》、中原中也か」

「俺は王じゃねえ」

中原中也と呼ばれた少年は硬い声で云った。

「ただ手札を持っているだけだ。『強さ』って手札をな。その責任を果たしているだけだ」

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作者名:十六夜紅葉×山吹 x他2人 | 作者ホームページ:http://yuuha0421  
作成日時:2023年6月15日 20時

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