Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第五章〉 (ページ9)

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大罪人の怒りと愛し子の怒りページ9

「何かあったの？」

　二階から下りてきた菫からふわりと香るユーリが愛用するフローラルの香水。優雅で上品な薔薇を連想させるその香りにさえ苛立つ

「…あんまり、ユーリの所に行くな」

　コップを拭き、開店準備をしながら自分の意見を菫に告げる

「…なんでメリオダスにそんなこと言われなきゃいけないのよ」

　案の定、ムッ、としたように口を尖らせる菫の言葉には棘がある

「あいつは、オレたちを裏切ったんだ」

「…ユーリが記憶が戻ってたこと黙ってたから疑うの？」

「お前だって見ただろ。ユーリが、エリザベスに向けてナイフを投げた所を」

　あの一瞬、本気で血の気が引いた。息があることを確認しても青白い顔がリズの最期と重なり、暫く心臓の鼓動が落ち着かなかった

「…私には、どうしてもユーリがやったとは思えない。今のユーリがあんな分かりやすい手を使う？本気で殺すつもりならもっと他の手を使うと思う」

「それが狙いだったら？」

「え？」

「敢えて分かりやすい手を使って自分から疑いを逸らすのが狙いだったら？…まぁ、結果は散々だけどな」

　5年前、瀕死のユーリを助けたのは彼女への償いのつもりだった。ユーリが目を覚ましたら謝ろう、そう思っていたのに当の本人は記憶喪失。自分の中のユーリと違う彼女に戸惑いつつもその生活を楽しんでいた気がする。…だが、こんな事になると知っていたら助けたりはしなかった。ユーリへの償いとエリザベスの犠牲を天秤にかければ間違いなくエリザベスの方に傾く。オレにとって、エリザベスの安全は何よりも優先すべき事柄なのだから

「ねぇ…仮にユーリとエリーが逆だったなら…メリオダスはエリーに同じ仕打ちをした？」

　エリザベスが貶されたような気がして苛立ち、菫を睨む

「エリザベスはそんなことしねえ」

　返答を聞いた菫さんは、蒼い瞳に怒りと憎しみを宿してオレを睨む

「エリーなら無条件で信じられることを、どうしてユーリならダメなの……！！」

　昔からずっと見てきたエリザベスを無条件で信じられるのは当然だ

"私は、あなたを信じているから。何があっても、あなたを愛してる,,

　脳内に響いたのは、優しさと哀しみを秘めた女王然とした声。知らないはずのそれが酷く懐かしい

「菫様は、どうしてそこまでユーリを信じることができるんだい？」

　睨み合うオレたちの間に入ってきたのは、怪訝そうに眉を顰めたキングの問いだった