Tu aimeras les gens et tu vivras fierement〈第五章〉 (ページ7)

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少女の本音と愛し子の痛みページ7

「彼が、自由の翼を手に入れることができたから」

　そう呟いたユーリの横顔はとても寂しそうだった

「彼ね、ずっと父親の命令に従うだけの人形だったの。だから、彼が初めて自分の意思で見つけた、心から護りたい存在(ひと)ができたことが嬉しかったの。彼を愛し、彼に愛され、彼を支えることのできる人。誰を敵に回しても彼の味方でいてくれるあの子は、彼にとってなくてはならない存在。私には、できないから」

「そんなことは……」

　ない、という声は掠れただけで言葉にならなかった。ユーリの瞳が、あまりにも哀しそうだったから

「私は、誰を敵に回しても彼の味方でいることはできない。彼を愛しているし、彼を護りたいと思っているわ。でも…必要性を感じたなら、彼を殺すこともできる。だから…私じゃダメだったの」

　涙なんて流れている。けれど、私にはユーリが泣いているように見えた

「ユーリは…なんで泣かないの？」

「え？」

　ユーリの話を聞いて何も体験していない私の方が泣きたくなった。それくらい、辛く哀しいことだった。それなのに、ユーリは泣かない。少なくとも、人前では

「私には、ユーリが泣くのを我慢しているように思えるわ」

「我慢しているつもりはないけど…泣いても何も変わらないことを知っているから。助けの手なんて差し伸べてはもらえない。弱さを見せれば食い潰される。そんな世界で育ったから泣けないのよ。強さを連想させる容姿も相まって…ね」

　エリザベス王女みたいに可憐だったなら良かったんだけどね、と苦笑混じりに告げるユーリは私が思っている以上に辛い経験をしているのだろう

　清純で無垢な百合を連想させるエリーと華やかで艶やかな薔薇を連想させるユーリは正反対。髪色や瞳の色はそっくりだが、中身だって全く違う。ただ、一つ共通点があるとするならば、それは"優しさ,,だ。その共通点さえ、御伽噺のお姫様のような無垢な優しさを持つエリーと現実の厳しさの中にある優しさを持つユーリは全く違う

「私は…ユーリに弱さを見せてほしい。女王のように毅然としたユーリも好きだけど、弱さだってユーリの一部分よ。だから…泣きたい時は泣いて」

　にこっ、と笑って告げるとユーリは珍しく目を丸くして驚いていた。その表情はいつもより幼く見え、私はクスッと笑みを零した