拗ねる大罪人と女神の揶揄い ページ38
「気分はいかがですか？」
サイドテーブルに置いてある猫と薔薇の花が描かれた透明な硝子製の水差しから白湯を注いだマグカップを差し出すと、上体を起こしたメリオダスは恐る恐る口をつける
「あちっ」
「白湯なのですから当然でしょう。冷まして差し上げましょうか？」
「いらねぇよ」
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、幼い子供と接するような態度で揶揄うとメリオダス様は少し拗ねたようにツンとそっぽを向いた
「何か召し上がりますか？とは言っても…もう夜ですから軽いものになりますけど」
サラサラと紙に羽ペンでメリオダス様の容態を追記しながら問うと、じっ…と視線を感じた
「何か？」
「なんで…オレを助けたんだ？」
「はい？」
……もしやこの人、死にたかったのだろうか。死ぬことができないのは、自らの身を以て知っているはずなのだが
「そんな胡乱な目で人を見るんじゃねえ」
「……死をご所望で？」
「違ぇよ！！」
「そうですか」
食い気味に否定され、私は再び紙に視線を落とす
「…お前、なんで自分が女神だってこと黙ってたんだ？」
「…起きていらっしゃったのですか？」
「うっすらと…な。エリザベスの声で少し意識が戻った」
と、少しモヤモヤした気持ちを抱く自分に呆れる
「…聞かれないから黙っていただけです」
「本当にそれだけか？」
病み上がりとは思えないほど強い輝きを宿るメリオダス様の翠の瞳。その瞳には何の負の感情もないというのに反射的に体が震えてしまう私は、彼に見つめられて照れていたあの頃にはもう戻れないのだろう
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作者名：アストライアー | 作成日時：2021年6月13日 18時
