少女のため息と大罪人のお礼 ページ18
「はぁ……」
お店の前にある鬱蒼とした森を抜けた先にある拓けた丘から街を見下ろす私はため息をつく。ため息をつくと幸せが逃げる、という迷信があるが今はため息をつかずにはいられない
菫さんも人が良いわよね。こんな得体の知れない女と〈七つの大罪〉を和解させようだなんて。…まぁ、確かに場の雰囲気が悪いと気分も落ち込むから菫さんの考えも分からなくはないわね。何より、この状況を作ってしまった私に非があるから何とも言えないという……
"違ったら、ちゃんと謝る,,
プライドが高くて意地っ張りで不器用で…でも、純粋で優しいメリオダス。さっきはスパッと斬ったけれど、話を聞こうとしてくれただけで嬉しかった
「…我ながら単純ね」
手の中にある自作のシロツメクサの花冠を見て小さく微笑う
どんなに裏切られても、どんなに嫌われても、彼を嫌いにはなれない。それは、彼がいつか分かってくれると信じているから。我ながら馬鹿だと思う。信用なんていう目に見えない不確かなものを信じて、一度ならず何度も痛い目に遭って…それでも信じ続けるなんて。どんなに愛しても振り向いてはもらえないことを知りながら初恋にしがみつく、馬鹿で滑稽で浅ましい女
「我ながらストーカーみたいね」
初恋を忘れられない、なんて失恋を自分の中で美化しているだけ。本当に幸せになりたいのなら、この恋を過去のものにして他の恋を見つけるべきだと思う。けれど、きっと私は死ぬまでそれをすることはないのだろう。きっと…この恋を胸に抱えたまま、幸せに暮らすであろうメリオダスとエリザベスに夢を見て永遠の眠りに就くのだろう
「ユーリ」
聞き慣れた…けれど、いつもより低い声に名を呼ばれ、私は一瞬息を呑む
「メリオダス様……」
ドクドクと息苦しさを感じるくらい心臓が強く脈打つ。何と罵られるか分からない恐怖で手が震える
怖い。ずっと好きで…今でもその気持ちは変わらない。でも、この人に罵られたり嫌われることはいつまで経っても慣れない
「エリザベスの怪我を治してくれたこと、礼を言うぜ」
「え……?」
不信感をぶつけられるとは思っていたがお礼を言われるとは思わなかった私は、メリオダス様の思わぬ言葉に思わず大きく目を見開いた
少女の驚きと大罪人の誠意→←愛し子の胃痛と〈七つの大罪〉との話し合い
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作者名:アストライアー | 作成日時:2021年6月13日 18時