第一章 ー呼び方と絆の関係ー 1 ページ7
Aは千鶴と一緒に台所へ行った。
「雪村さん、俺の分のたすきってありますか?」
「ありますよ」
千鶴はAにたすきを渡す。
「ありがとうございます」
先ほどと同じ笑顔でそう言うと、Aは慣れた手つきでたすきを結び、片付けに取りかかった。
手際良く要領良くやっていくA。
台所の配置や仕組みを覚え、家事が得意な千鶴。
2人がかりでやると、あっという間に終わった。
「すごいですね、Aさん。もう終わっちゃいました」
そう言った千鶴に、Aは微笑んだ。
「いや、俺の手伝いなんて微々たるものです」
Aはちょっと照れくさそうに笑いながら、頬を掻いた。その仕草は、男装しているとはいえ、かわいらしいものだった。
「あの、Aさん」
折角だ、と。千鶴の中で、少し欲が出た。
「私のこと、名前で呼んでいただけませんか?」
仲良くなってもいいじゃないか、と。
Aは突然固まって、ひゅっ、と息を吸い込んだ。
「ぇ、え、あ、あの、雪村、さ」
彼女は、ひどくうろたえていた。
それを見た千鶴も、つられるようにあわてだした。
なぜそんな不安げな顔をするんですかAさん私何か嫌なことしてしまったのでしょうかすいません、と長い言葉が千鶴の頭の中を回りだしたときだった。
「ち、づる、さん……」
か細く呼んだのは、まぎれもない彼女で。
口元が緩んでいくのが、自分でもわかった。久しぶりの、女の子との会話。
あちらこちらにAの視線が彷徨った。少し頬が赤らんでいた。
もっと贅沢を言っても、許されるだろうか。千鶴の頬も、赤みを帯びた。
「呼び捨てで、敬語もなしでお願いします!あと、私も名前で呼んでいいですか!?ぜひお友達になりましょう!!」
Aの瞳が、微かに大きくなった気がした。その次の瞬間、ほろりと硬直が解け、輝きだすように笑った。
「あの、Aさ……」
「” A ”」
あ、と。
千鶴は、体の底が熱くなっていくのを感じた。
「改めてよろしくね、A!」
「こちらこそ、千鶴!」
雲一つない、明るい日だった。
第一章 ー呼び方と絆の関係ー 2→←序章 ー驚きの訪れー 6
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霜月こよみ - 嬉しすぎて慌てたせいで、下の返信がどなた宛てか分からなくなってしまいました。すいません。燐タロ様への返信です。 (2016年3月1日 23時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
霜月こよみ - 閲覧、そしてコメント、ありがとうございます! これからこの2人はどんどん絡んでいく予定ですので、楽しみにしていて下さいませ! 更新頑張ります! (2016年3月1日 21時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
燐タロ - 主人公と沖田さんの関係が気になります。更新楽しみに待ってますね(*´∇`*)。 (2016年3月1日 15時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
霜月 - 最近 まったく更新出来なくてすいません。現実がもう少し落ち着いたら、書き出そうと思っています。こんな作品ですが、これからもよろしくお願いします。 (2015年1月28日 23時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
冷凍バナナ(プロフ) - 頑張って!霜月ちゃん(*´∨`*)ノ"面白いよ! (2014年11月8日 11時) (レス) id: 55ea56e042 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月こよみ | 作成日時:2014年3月22日 15時