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第二章 −外れの心ー 8 ページ21

無情な刃が、眼前に迫って来る________

「伏せろっ!」

 それは、さながら閃光。Aは考える間もないまま、膝を折った。

 直後、頭上で風を切る音がした。


「何しに来た! 返答次第じゃこのままたたっ斬る!」

 そうっと振り返ると、茶色の髪が夜風になびいているのが視界に入った。長い刀を前に突き出し、白い寝着の間を足で割って仁王立ちしているのは、留守番組の藤堂。


「何だ、貴様も寿命を縮めたい口か?」

「それはあんたでしょ、風間千景」


 千鶴のすぐ横の柱に身を任せていた沖田。千鶴は気付いていなかったようで、びくりと肩をはねさせた。


「お…きたさ……」

「こういう時はすぐ呼んでくれないと困るんだけど、千鶴ちゃん」


 言うが早いが沖田は走り出し、庭先の侵入者に躍りかかった。


「平助、Aちゃんと千鶴ちゃんよろしく」

「わかってら!」


 かぁん、という甲高い音がAの耳の奥を震わせた。はっと我に返ると、いつの間にか息をしていなかったのに気付く。胸の中に空気を入れたら、地面に尻餅をついてしまった。

「おいA、大丈夫か?」

 Aは返答できず、浅い呼吸を繰り返した。その様子に藤堂の顔に心配の色がみるみるにじんでいく。ついに己の刀を置き、藤堂は彼女の肩を揺すった。

「大丈夫じゃあないんだな!? どっか怪我したか!?」

「……へいすけ、」


 その黒い瞳は、目の前の激しい戦いを写していた。その真剣さに、思わず藤堂は口をつぐんだ。

「…だめ、だった」

 ぼそり、と呟いた言葉は、やけに暗い響きを持っていた。だが心中を図りきれない彼は、眉を顰めるにとどめて、Aの肩に手を回す。


「とりあえず避難するぜ。総司の刀に巻き込まれたらたまんねえし」

 よっこらせ、とまだ力が入らないその体を持ち上げると、彼女は藤堂に連れられるがままよたよたと歩き出した。しかしあまりにも脱力しすぎていて肩だけでは不安になり、腰も手で支える。

 
 普段男とばかりつるんでいるからか、Aの体がやけに頼りなく感じた。

 こんな細っこい腕で、長い打刀を振るったのだろうか。こんな華奢な腰で重い一撃を受け止めたのだろうか。こんな柔らかい体で、化け物じみた男と刃を交えたのだろうか。


 平気なはず、ない。


 腰の抜けた千鶴の横に彼女を落ち着けて、藤堂は去っていく侵入者を一瞬見た。

第三章 −彼らの背中ー 1→←第二章 −外れの心ー 7


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作品ジャンル:恋愛
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霜月こよみ - 嬉しすぎて慌てたせいで、下の返信がどなた宛てか分からなくなってしまいました。すいません。燐タロ様への返信です。 (2016年3月1日 23時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
霜月こよみ - 閲覧、そしてコメント、ありがとうございます! これからこの2人はどんどん絡んでいく予定ですので、楽しみにしていて下さいませ! 更新頑張ります! (2016年3月1日 21時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
燐タロ - 主人公と沖田さんの関係が気になります。更新楽しみに待ってますね(*´∇`*)。 (2016年3月1日 15時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
霜月 - 最近 まったく更新出来なくてすいません。現実がもう少し落ち着いたら、書き出そうと思っています。こんな作品ですが、これからもよろしくお願いします。 (2015年1月28日 23時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
冷凍バナナ(プロフ) - 頑張って!霜月ちゃん(*´∨`*)ノ"面白いよ! (2014年11月8日 11時) (レス) id: 55ea56e042 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜月こよみ | 作成日時:2014年3月22日 15時

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