第二章 −外れの心ー ６ ページ19
千鶴は、ひっ、と小さな悲鳴をあげた。それと同時に、友人の白い袖を強くつかむ。
Aは布が引っ張られるのを感じながら、必死に平静を保とうとしていた。
「て、てめぇ、何者だ」
闇から浮き出た男は、答えない。
Aの背に、嫌な汗が伝う。それでも仕事仲間の女友達を守ろうと、手元の刀を恐る恐る抜いた。
彼女の反応から見ても、この男と親しいとは到底思えない。むしろ個人的なものでもなく、新選組とも敵対しているのではないだろうかと思わせる雰囲気があった。
金髪の男は、豪奢な着物を揺らしながら静かに近づいてくる。その美しい顔面には薄ら笑いを浮かべ、Aの後ろにいる千鶴を面白そうに見ていた。
「こ、来ないでください……！」
「何を言うか。またとない好機、この俺が逃すわけなかろう」
ゆったり、ゆったり。上品な足運びで、足音すら立てない。余計に、二人の恐怖を煽る。
千鶴の体は、本人も気づかないうちに震えていた。
誰か。誰か、助けて。私は、この人に敵わない。
「来るんじゃねぇ。それ以上寄ったら、大声出して人を呼ぶ」
凛と、響いた。ここでの、仲間の声。
Aは、千鶴の震えが少し収まったのを感じた。
俺が、何とかするんだ。俺と違って、この友人は、れっきとした、か弱い女なんだから。
「______煩い、小娘が」
男の目が、Aを初めて見た。
血の色の瞳の、奥深くには＿＿＿
「っ、は」
戦慄が走る。動悸の速度が増す。冷や汗が、どっと噴き出た。喉がからからで、声が出せない。
立てた片膝から、崩れ落ちる寸前だった。
「この程度のもの、殺気とは言わん」
怜悧な視線が、途端つまらなそうな色を帯びた。
すると、Aに突き刺さった何かが�惜き消えた。思わず、息を大きく吐き出す。
「貴様ごときが俺に歯向かったところで何ができる。何もしない方が、その短い寿命を更に短くせずにすむぞ」
男は、また一歩、足を進めた。
あと、たった数歩で、手が届く距離になってしまう。
「……だめ、だ」
きらり。
白刃が、目の前できらめいた。
どんっ。
Aは、背中にあった小さな手を振り切り、床を蹴った。
手に持つ得物で、大きく横一閃。
侵入者は、一、二歩、後退した。
「てめぇのことは知らねぇが、こいつはやれねぇな」
価値がないと判断したはずの剣士が、刀を構え、月を背負って立っていた。
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霜月こよみ - 嬉しすぎて慌てたせいで、下の返信がどなた宛てか分からなくなってしまいました。すいません。燐ﾀﾛ様への返信です。 (2016年3月1日 23時) (
レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
霜月こよみ - 閲覧、そしてコメント、ありがとうございます！ これからこの２人はどんどん絡んでいく予定ですので、楽しみにしていて下さいませ！ 更新頑張ります！ (2016年3月1日 21時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
燐ﾀﾛ - 主人公と沖田さんの関係が気になります。更新楽しみに待ってますね(*´∇｀*)。 (2016年3月1日 15時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
霜月 - 最近 まったく更新出来なくてすいません。現実がもう少し落ち着いたら、書き出そうと思っています。こんな作品ですが、これからもよろしくお願いします。 (2015年1月28日 23時) (レス) id: 953b6274fe (このIDを非表示/違反報告)
冷凍バナナ(プロフ) - 頑張って！霜月ちゃん(*´∨`*)ﾉ"面白いよ！ (2014年11月8日 11時) (レス) id: 55ea56e042 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月こよみ | 作成日時：2014年3月22日 15時
