第27話 ページ29
原田さんに連れられ、少し街の中を歩き今は甘味処にいる。
原田「ほら、これなら熱くねぇし食えるだろ?」
そう言って手渡されたのは『串団子』と言われるものだった。
A「…いただきます。」
恐る恐る一口かじる。
甘くて、すごくもちもちしてる。
A「美味しいです。」
原田さんは横で緑茶を飲んでいた。
原田「そりゃ良かった。というか、団子知らないなんて初めて聞いたぜ。」
そのままモグモグと食べ続ける私を見て、原田さんは苦笑した。
私たちの住んでいたところは一年中雪に覆われているし、こちら側で普通に育つものも育たない。
それを説明すると、原田さんは納得してくれたのか、頷いた。
原田「そうなってくると、普段は何食ってたんだ?」
A「普通にご飯とか食べてたと思うんですけど、こういう甘味みたいなものは無かったです。」
何を食べていたかと改めて聞かれると、あまり記憶にはないが、確かご飯は食べてたはず。
原田「米は育つのか?」
食べてた記憶が一応あるんだし、おそらく育つんだろう。
A「私は家から一回も出たことないので、分かんないですけど、多分育つんだと思います。」
すると原田さんは、しまった、という顔をしていた。
A「あの、原田さん?どうしたんですか?」
原田「いや、悪い。嫌なこと思い出させちまったよな。」
どうやら原田さんは、昔のことを思い出させてしまった、と気にしているみたいだった。
A「そんな、気にしないでください。原田さんは悪くないんですから!それに、私もあんまり気にしてないですし。」
原田「ありがとよ。」
そう言って笑った後、原田さんは何かを考え始めたのか、少しの沈黙。
A「……あの?」
そういうと、原田さんは意を決したように私を見た。
原田「Aのことを、俺にちゃんと教えてくれねぇか?」
A「えっ?」
原田「Aのこと、俺はほとんど知らねぇ。組長として、隊士のことはちゃんと知っておきてぇんだ。じゃないと、無意識にお前のことを傷つけちまうこともあるだろうしな。……ただ、無理にとは言わねぇが。この新選組にいるやつらは、みんな過去に何かしら抱えてるからな。平助や斎藤、総司、土方さん。それに俺だってな。」
私のことを、理解しようと、知ろうとしてくれることは、素直に嬉しい。
だけど。
95人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彗.(プロフ) - そうすけさん» あけましておめでとうございます!ありがとうございます!面白いと思ってもらえるようなものが書けるように頑張ります! (2017年1月8日 13時) (レス) id: b992a17143 (このIDを非表示/違反報告)
そうすけ - 何か面白い作品ですね!更新楽しみにしてます。それと、謹賀新年!今年も楽しい作品沢山更新してくださいね! (2017年1月7日 3時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:彗. | 作成日時:2016年11月23日 17時