貴方side. ページ3
羅刹を止める為に。
町の人を、助ける為に。
左之兄は戦ってたんだ。
私は左之兄の槍を見つめた。
よく見ると、槍の柄には傷がたくさん付いていた。
それだけ、厳しい戦いだったのだろう。
もし、そこに私がいたら。
左之兄は死なずにすんだかな。
傷を治すことが出来ていたら。
まだ、ここにいたのかな。
不知火「あいつは、永倉のやつと会津で待ち合わせをしてたみたいでよ。けど、この槍はお前に渡すべきだと思ってな。だから、この槍を持って来てやったってわけだ。ほらよ。」
私は不知火さんから槍を受け取る。
それを受け取った瞬間。
涙が止まらなかった。
A「左之兄。」
何も出来なかった。
助けられなかった。
左之兄が離隊する時、もしかしたらもう会えないかもしれないと、分かっていたはずなのに。
実際その時が訪れてみると、全く実感がわかない。
土方「お前のせいで原田が死んだわけじゃねぇ。あいつは、あいつの信念を最後まで貫いた。この結果も、原田が決めた道だ。」
A「はい。分かってるんです。けど、けど………。」
後悔せずにはいられない。
もしあの時一緒に行っていたら。
土方「お前は、原田と別れても、新選組にいたいと言ってたのによ。あの言葉は嘘だったのか。」
A「そんなことありません!私は私で、自分の道を行くって決めたんです!」
そこまで言って気づいた。
そう。
この道は私が自分で決めた。
たとえ左之兄ともう二度と会えなかったとしても、土方さんのそばにいると。
土方「やっと、少し落ち着いたみたいだな。」
A「はい。すみません、取り乱してしまって。こんなんじゃ、左之兄に怒られますね。」
自分で決めた道なら、しっかりやれって。
A「不知火さん。ありがとうございます。左之兄の槍を持って来てくれて。」
不知火「ああ。あいつは、十番組組長の原田は、このオレ様が認めざるを得ねェほど大した男だった。」
A「はい。左之兄は、やっぱりすごいです。」
私は左之兄の槍を抱きしめた。
不知火「あいつの体は、羅刹と戦った近くの木の下に埋めた。戦いが落ち着いたら、オレ様のところに来い。場所を教えてやる。」
A「何から何までありがとうございます。」
土方「何が何でも死ねねぇな。」
A「はい!」
不知火さんは、最後に頑張れよ、と一言残し、その場から立ち去った。
そして、私たちは仙台へ向かった。
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作者名:彗. | 作成日時:2016年10月23日 0時