貴方side. ページ17
あれから数ヶ月
私たちは穏やかに日常を過ごしていた。
今日もいつも通り、朝餉を作り、歳三さんを起こしにきた。
けど、すでに布団は畳まれ、部屋に歳三さんの姿はなかった。
A「私が起きた時にはまだ寝てたはず。」
どこに行ったんだろう?
私が疑問を残しながら、居間に戻ってくると玄関から歳三さんが入ってきた。
土方「A、おはよう。」
A「歳三さん、おはようございます。って、どこに行ってたんですか!」
私がそう言って歳三さんを睨むと、歳三さんは悪りぃと苦笑いになりながら謝った。
土方「それより、ちょっと見せてぇもんがあるんだ。」
そう言って、また玄関から出て行った歳三さん。
私は首を傾げて疑問を残しながら、歳三さんについて行った。
屋敷の裏に回ると、そこには満開の桜の木が並んでいた。
A「すごい。」
私と歳三さんは無言で桜を見上げていた。
桜の木だとは知っていたが、ここまで凄いなんて。
土方「さすが風間だよな。」
歳三さんは少し苦笑いになりつつも、やっぱり桜に見入っていた。
A「確かに、風間さんらしいです。………それにしても、本当に綺麗ですね。」
桜を見ると、新選組にいた時を思い出してしまった。
何だか…左之兄の、皆んなの姿が見えた気がして、私は知らぬ間に涙を流していた。
土方「?!どうした?」
歳三さんは突然泣き出した私に驚いているようだった。
A「すみません……。新選組にいた頃を思い出して………気づいたら、泣いてました。」
歳三さんも同じようなことを思い出していたのか、そうか、と行って私の手を握った。
少し驚いたけど、その温もりに安心して、私も握り返す。
A「きっと、桜って新選組の皆さんに似てるんだと思います。」
儚いけど、力強く必死に自分の志を曲げずに生きている姿が。
また滲んできた涙を拭う。
土方「ったく。泣きすぎだ。俺は綺麗だったからお前に見せてやろうと思って連れてきたんだよ。泣かせるためじゃねぇ。」
A「はい。」
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作者名:彗. | 作成日時:2016年10月23日 0時