【薄桜鬼】紅ノ槍〜参〜

貴方side. ページ39

あれから、私達は旧幕府軍に加わり会津を目指していた。

けれど、新選組の評判は相変わらず酷いものだった。

旧幕府軍兵「あいつらが人斬り集団の新選組か？」

旧幕府軍兵「気に入らなきゃ仲間さえ斬り殺す狂犬の集まりだ。」

あまりに酷い言い草に私は彼らのところへ行こうとした。
新選組はそんな集団じゃない、と。

けれど、土方さんに肩を掴まれた。

土方「言いたい奴には言わせときゃいい。」

私はそんなふうに割り切れなかった。
いい人達ばかりなのに。
何も、知らないくせに。

けど、ここでまた怒ったりしたら評判は悪くなる一方か。
ここは冷静になるべきかな。





それからしばらくした頃。

？？「君が新選組の土方くんかい？」

前からやって来たのは、見るからに優しそうな男の人だった。
知らない人だ。
どうやら土方さんも知らなかったらしい。
顔には明らかに、お前誰だ、と書いてあった。

土方「あんたは？」

大鳥「僕は歩兵奉行の大鳥圭介。初めまして。」

その人は手袋を外し、土方さんにその手を差し出した。

土方「なんだ。」

土方さんにそう言われると大鳥さんは少し驚いていた。

大鳥「えっと、シェイクハンドだよ。……知らないのかい？欧米での挨拶のようなものだよ。」

そこまで言われても特に何もしてこない土方さんを見て、大鳥さんは苦笑いしながら手袋をはめ直した。

大鳥「えっと……。」

すると、大鳥さんは私の方を見て少し驚いた顔をした。

大鳥「？間違っていたら申し訳ないんだけど。君は女の子かい？」

A「あ、はい。」

ここでいきなり話を振られるとは思わなくて少し驚いた。

大鳥「よかった。髪が短いから間違ってたらどうしようかと思ったけど、新選組に女の子なんていたんだね。」

A「はい、私だけですけど。」

大鳥「へぇー。それにしても珍しい髪色だね。」

A「そ、そうですね。まだ兄しか同じ髪色を見たことがないです。」

髪の話になり少し緊張する。
だけど、私の不安とは裏腹に大鳥さんは人のいい笑みを浮かべていた。

大鳥「兄？もしかして、十番組だった原田くん？」

まさか知っているとは思わなかった。

A「はい、そうです。」

大鳥「そうなのか。綺麗な髪だね。」

私と初対面でこの髪のことを気にせず話してくれる人は少ない。
ましてや、綺麗だなんて言ってくれる人なんて。

大鳥「えっ、どうしたの？大丈夫？」

気づくと私の頬には涙が伝っていた。

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