10 ページ10
千冬
「俺は、Aを愛してる
この先、A以外は愛せない」
俺がそう言うと、一虎くんは俺に近づいて来た
来る!と思って瞬時に一歩大きく後ろに飛んで正解だった
一虎くんの拳が体をかすめる
いつか腹部に食らったあの一発はかなり効いたからな
一虎
「ぉ、勘が戻ってきたか?」
千冬
「…ここでアンタとやり合う理由はねぇよ…」
一虎
「お前になくても、俺にはある
一発殴るくらいじゃ気がすまねぇんだよ!
愛してる?
ならなんで突き放した!?なんで傷つけた!?
記憶がなくなったあいつは、幸せでもなんでもなかった!
自分の周りに起きてる違和感にずっと苦しんでた!」
ガキの頃とは違う威力の蹴りとパンチ
まともに受けたらやばいと肌で感じる
久しぶりの、拳でのケンカはガキの頃を思い出すな
千冬
「俺だって別れたくて別れたわけじゃねぇ…
ただ、俺にとっては場地さんの遺志も大事だって気がついた!
あの人がいたから今の俺がいる!
あの人がいたから俺はAと出会えて今がある
全部、俺とAには、根っこを辿ると場地さんがいるんだ
それはどうやったって、切っても切り離せねぇ
だから、そーゆーのも込みで…
俺は、場地Aを今も愛してる、この先もだ!」
俺の拳が一虎くんの顔に当たり、一虎くんは後ろに倒れ込んだ
倒れ込んだまま、空を見上げる一虎くん
一虎
「…なら、手放すなよ…
おまえがそんなんだと、俺はあと何回、Aを諦めなきゃならねぇんだ…?
少年院に入った時
Aがお前の女になった時
俺はその度にAを諦めた
諦めて、ただ、あいつが幸せで、笑ってくれてればそれでいいって思った…
あいつ、笑うと可愛いじゃん?」
ニッ、俺の方を見て笑う一虎くん
地面に仰向けになる一虎くんの隣に俺は座って、同じく空をしばらく見上げた
なんだか、長く悩んで考えてたことが、ちっぽけに感じてくる
千冬
「…ガキの頃、思い出す…
ケンカのあとにこーやって空眺めたりして…
俺、何を悩んで立ち止まってたんだろな…」
一虎
「…さぁな…
でも、ちょっとはスッキリしただろ?」
千冬
「ちょっとだけな」
これは一虎くんなりに、背中を押してくれてるんだろうな…
一虎
「Aに、俺のことは話した
まぁ、聞いてもまだ全然思い出せてねぇ状態だけどな
千冬、ちゃんと真正面からぶつかってこいよ
あいつがちゃんと思い出せるかは、お前次第じゃねぇの?」
95人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神奈月(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。お話は佳境ですが、みなさんに楽しんでもらえるようにがんばります。 (2022年11月27日 7時) (レス) id: d80d51a44f (このIDを非表示/違反報告)
あい - いつも更新を楽しみにしています。千冬と一虎、これからヒロインとどんな結末が待ってるのかとても楽しみです (2022年11月26日 16時) (レス) @page39 id: c280eab537 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神奈月 | 作成日時:2022年11月1日 13時