話したい14【桃】

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バッと突然上げた顔は満面の笑みだ。


「もっかい！」


キスをせがむように口を尖らせてくる。
やばい、可愛い。
スマホを手にしていなかったことを後悔しながら、御所望通り再びキスをすれば、またジッと俺を見つめておねだりの瞳。
まだ足りないらしい。


さ「Aちゃんキスすきね〜。」


そう言いながら子供みたいなキスを贈れば、幸せそうに笑う。


「すき。」


それはキスか俺かどちらに対してか。
後者であって欲しいなと願いながら、まだ足りなさそうに少し尖らせてる唇をまた重ねる。
チュッと軽いリップ音をたてるほうが、Aちゃんは好みらしい。


「もっかい！」


目を閉じてるその姿に、いたずら半分でデコピンしたくなる。
いたずら半分。
これ以上は先ほど芽生えた俺のぐらつく理性が頑張りすぎていて可哀想だ。


「ねぇ…ちゅーして？」


待たされすぎて痺れを切らしたAちゃんは不機嫌そうに口を尖らせる。
どうやら俺の理性には頑張っていただかないといけないらしい。
再びキスしてその顎を掬う。


さ「ねぇ、そんなにキス好きならもっとすごいの教えてあげよっか？」


新しいことは嫌い。
でも好奇心は旺盛。
そんなAちゃんの性格わかりきってる。
だからずるい言い方をする。
強制的に顔をこちらに向けているAちゃんの瞳は期待と不安を含んで俺を映している。


さ「知りたい？」


怖がらせないように、出来るだけ優しく、笑いながら問い掛ければ、促されるままに首を縦に振る。
その答えに満足した俺は、Aちゃんを抱き直して逃げられないように腰を抱えた。
少しだけ、視線が合うように顔を上げさせて、鼻と鼻がぶつかる程に顔を近づける。
いまどんな感情？
ドキドキしてる？
それとも期待してる？
怖い？
心に浮かぶ疑問は口にはせず、上目遣いのその瞳を逃すまいと捉えた。

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