その38 ページ39
「……男に可愛いとか、需要無いやろ」
『あれ、起きてたのか』
「目覚めて最初に言う事がそれなん？」
いつかの時と同じ様な台詞を言ってのそりと起き上がったゾムに、『仕方無ぇだろ』と笑い掛けた。
『お前、ずっと居てくれたのな』
「……おん。お嬢が怪我したん、俺のせいやし」
落ち込む様にしゅんと下を向いたゾムは、ムスッとした声で言う。
「俺、全然役に立たんかった。ケンカ強いつもりで、お嬢達と一緒に居ったからそういう界隈に染まったつもりで、まだまだただの一般人やった」
『……ああ』
否定はしない。いや、否定する事が出来ない。何故ならば、あんな状況で動く事が可能なのは余程とち狂った神経の持ち主か、普段から常に死の危険と隣り合わせな生を送っている者くらいだろうと思うからだ。短く頷くと、ゾムはグッと下唇を噛む。
「俺…悔しかった。護るって言ったのに、それどころか護られてもうたし……動けんかった。怖くて、体止まってもうて…それが、遣る瀬無くって………どうしても、自分に苛立つんや」
…護る、ねぇ。私にそんな事を言えるのは、せいぜい親父かコネシマくらいのものだろうが。そう思いながら、私はそっとゾムの髪を撫でた。
『良いんだよ。大体、男の方が女を護らなくちゃいけないなんて考えは、今時あまり流行らないだろ』
「…それは、そうやけど」
『まあ聞けよ。あのな、私は強いんだよ。心がとかじゃあ無くて、物理的にな』
体重差がある相手でも打ちのめす方法も沢山知っているし、そこらのチンピラなんかよりよっぽど体術に長けている。これはまぁ、一重に幼少期からの英才教育の賜物とでも言っておこうか。
『だから、護るのは寧ろ私の方だ』
「で、でも…」
『うるせぇな、私がお前に言った事聞いて無かったのか？』
尚も食い下がるゾムの前髪を片手でかきあげて、その美しい瞳と視線を合わせる。蛍光灯の白い光に当てられて、翡翠の輝きを持つ目は余計に綺麗に見えた。
『好きだっつってんだよ。良いから黙って私に護られてろ、野良猫』
「へ…」
お前が初めて家に来たあの日から、私はずっとお前を大事にすると決めたんだ。強いとか弱いとかでは無く、一人の人間として護りたいと。
『大体な…学校で“お嬢”とは呼ぶなとあれ程言ったのに、今後どうしてくれるんだ』
「あ……ご、ごめ…」
真剣な顔をしてそう言えば、ゾムは申し訳無さげに目を伏せる。冗談だ、とそれを笑い飛ばして、私はゾムに訊いた。
『それで、返事は？』
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
