その35 ページ36
正直痛い。くっそ痛い。これまでの人生で刃物による怪我をした事は何回も在るが、斬られた事は在ってもザックリいかれたのは初めてだ。幸い腹筋に刺さっただけの様なので、出血さえ止まれば問題は無いと思うのだが。
『ふぅ……少しクラクラするね』
「当たり前やろ、腕も血ぃ出とるんやからな！？」
『あーあー、声大きいよ鳥井君。頭に響くから、音量絞って欲しいな？』
私の望み通り少し離れてくれた先生達の代わりに、ゾムがそっと私を支えてくれている。不審者の男は気絶した様で、すっかり静かになっていた。
「何でこんな時にまで頑張って優等生ぶるん…？」
『皆が見てるから』
それだけを短く答えて、「退いて退いて！！」と言いながら慌てて駆け上がって来た保健室の先生に笑って見せる。
「えっと、二年B組のAさん…よね。止血帯持って来たから、応急処置するわよ」
『はい、お願いします』
「痛かったらすぐ言ってね。止血作業は辞めてあげられないけど」
『大丈夫です』
嘘です、既に痛いです。そんな言葉を呑み込んで、額に浮いた汗を拭った。手早く止血を終えた先生にお礼を言ってから、私はゾムを支えにしてゆっくりと立ち上がる。
「あ…こら、安静にしてなさいって言ってるでしょう？」
『もう血も止まったので動けますよ。心配し過ぎです』
「貴女自分から出た血の量解ってるの！？」
『床が平だから広がって見えるだけですよ』
微笑んで見せれば保健室の先生はどうしたものかと口を噤んだが、パチリと目が合ったらだ兄にはキッパリと首を横に振られてしまった。
「ダメ。座って、楽な姿勢を取って。痩せ我慢は良くないよ」
『…そう、ですけど』
らだ兄の言いたい事は解る。だが、一刻も早く携帯を取りに行って、組に連絡しなければ。……兎に角早く、この右腕の刺青を隠したいし。唇を噛んでこっそりと二の腕を摩った時、バサリと何かが体に掛けられた。
『へ…』
「それ着といてや」
視界の端でヒラヒラと裂けたフードが揺れる。ぼうっとする頭でゾムの方を見れば、綺麗な翡翠の瞳が廊下に射し込む陽射しに照らされて柔らかな光を放っていた。……初めて見る、ゾムの素顔だ。
『お前、フード…』
「ええから」
『……そうか。思っていた通り美人だな』
フッと笑った私は、朦朧とした頭が悪さをしてか、およそここで言うべきでは無い事を口走っていた。
『…ゾム、好きだ。結婚してくれないか』
面食らったゾムの頬に口付けをして、そのまま意識を手放した。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
