その28 ページ29
特に考えずとも足が向いた部屋は、勿論若衆の“お兄ちゃん”達と同級生らの居る大部屋だ。ノックもせずに無遠慮に襖を開け、進行中であろうUNOの手札を持ったまま吃驚した顔をして私を見る皆の中を無言で進み、一直線で一人の男の前まで行った。
「お？お嬢、どうしたんや。この時間に来るとか珍しいな」
人工的な電気の下でも眩く光を反射する金髪の幼馴染に、迷い無く両腕を伸ばし抱き着く。
「んえっ！？ほ、ほんまにどうしたんやお前」
『コネ…………孝行』
「！」
驚いた声に被せて名前を呼べば、コネシマは何かを察した様に目を見開いた。コネシマは手札を近くで観戦に興じていたエミ兄に投げて寄越し、私を抱き上げながらその場から立った。
「…ちょお、俺今日は奥の部屋で寝るわ」
一応、と言う様な声音で皆に告げて、コネシマはポンと私の頭を撫でる。
「行くで、A」
『……おう』
コネシマは、取り敢えずは何も訊かずに大部屋を後にする。言葉にしなくても伝わるこの間柄の心地良さは、私達自身にしか解らないだろう。恋とか愛とか云うのでは無く、己の分身に近い感覚かも知れない。お互いに唯一甘えられる相手であり、物心ついた時には共に居た“もう一人の自分”。奥の狭い部屋にゆっくりと私を下ろすと、コネシマは布団を引っ張り出して敷いて腰を下ろし、こっちへ来いと隣を叩いた。
「A、何があったんや？」
『………ゾムを、怒らせた…かも』
「そらまたえらい事したな…何でなん？」
何で、と問われたとて解らない。倖せになる方法を考えた事は何遍も在るが、結局叶わぬ夢想だと知って諦めた。……いや、その諦める事をダメだと怒られたのだったか。
『あいつは“自由”を好いてて、それは誰にでも等しく与えられるべきだと思っているみたいだから……その“自由”が私に無い事が、腹立たしくて堪らないんだと思う』
それでも、これは私の宿命だ。答えになった様ななっていない様な曖昧な返しをすると、コネシマはじっと私の瞳を見据えた。
「…Aは、もうちっと他人を頼るべきやな」
『は？何言ってんだ孝行、今まさにお前に頼ってる所だろ』
私達が名前で呼び合うのは、何か相手に聞いて欲しい話が在る時だ。私からコネシマに助けを求めたのは、これが初めてだが。首を傾げた私に対してコネシマは緩く頭を振ると、ぎゅっと強く私の手を握る。
「お前に“自由”が無い訳やない。別に良いや、じゃ無くて、A自身がどうしたいかを一度考えてみ？」
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
