その23 ページ24
『………なあ』
「何です？お嬢」
『そう、それ。私ってここの組長の娘だよな？』
「せやね」
『つまり、立場的には皆に何かお願いしたら可能な限り聞いてもらえる筈だよな？』
「そうやな」
『……何でお前らは私の一番のお願い聞いてくれねぇの？』
若衆だけでダラダラしていた休日。私の言葉に、周りは全員静まり返る。ゾムが組に来てからはもう半年近くが経過していた。初めの頃は遺憾無く人見知りを発揮してオドオドしがちだったゾムも、今やすっかり皆に馴染んでしまった。私に対してなど、最早コネシマよりも距離感が近いくらいだ。まあ、そんな事はどうでも良い。私は学校から配られたプリントをぐしゃりと握り込み、皆を見渡す。
『親父と母さんが参観に来れないのなんて、とうの昔から知ってたっつーの。てか、今まで一度も来れた事なんて無ぇだろうが。だから、連絡来ても言うなって伝えてあるよな？』
「…それは、そうやけど」
『家を離れられないからってんで私の参観日とか学校行事の度に親父自身を責めてる姿はもう見たく無ぇんだよ。だから体育祭の日付けも教えて無かったってのに……』
はぁぁ、と深い溜息をつく。そもそもとして、私が普通の公立校に通えている言葉に事態が奇跡の様なモノなのだ。一生懸命頼み込んで、組の人の送迎付きで登校する事と勝手に友人と遊びに行かない事を条件に許してもらったのである。私は若衆の全員をギロリと睨み、低い声で言った。
『で？誰だ、学校の配布物を私のファイルから抜き取ってまで人目に付く様な場所に置いた奴は』
小学生の頃、どの授業参観にも運動会にも来てくれなかった両親に対して、幼く何も理解していなかった私は『何でお父さんとお母さんはいつも居ないの？』と訊いてしまった事が在る。その時に両親が一瞬見せた苦しそうな哀しそうな顔が忘れられず、それ以来私は親に参観日を伝えなくなったのだ。座布団の上に行儀悪く足を組んで座っていると、ゾムがおずおずと手を上げた。
「…言ったのは俺、です」
『へぇ』
「シッマと、体育祭の話しとって……それを、通り掛かった姐さんに聞かれてしまってん。…ご、ごめんなさい」
頭を下げるゾムを庇う様に、今度はシャオ兄が両腕を広げて私の前に翳す。
「で、でもプリント取ったのは俺やねん！お嬢、漸く最近楽しそうに笑う様になったから…行事に家の者、行かせたくて…」
『本当？』
「へ？」
『私、楽しそうか？』
そう尋ねながら、じっとシャオ兄の瞳を覗き込んだ。
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ミックスベリー - 完結おめでとうございます！最高でしたぁぁぁ！！ (2021年9月25日 19時) (
レス) @page49 id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
千寿(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！前作も毎日更新を待ってるくらい好きだったんですが、今作もめちゃくちゃに幸せで最高でした！！！！幸せになれ〜という気持ちでいっぱいです！！！ありがとうございます！！ (2021年9月25日 13時) (レス) @page49 id: d8421960c5 (このIDを非表示/違反報告)
ミックスベリー - 神作品をありがとうございます。いつも拝見されていただき、ニヤついております。 応援しております！ (2021年9月15日 21時) (レス) id: ff705752ad (このIDを非表示/違反報告)
オタクのオクタ - あっ結婚してください (2021年9月2日 5時) (レス) id: 748c39705b (このIDを非表示/違反報告)
はぁな。 - うわぁぁぁぁぁぁぁ何これ無理！神作品すぎません！？…すみませんお騒がせしました。無理しない程度に更新頑張って下さい！ (2021年8月22日 8時) (レス) id: cdc92f829b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうり
| 作成日時：2021年8月20日 20時
