34松 ページ36
「…え」
「……」
顔は此方を見たままだけど、目は虚ろで感情が読み取れない。呆然としているとか放心状態に近いと思うけど多分どちらでもない。
本当に彼女の顔になにもない。
突発的な反応に俺の頭はさっきまでの勢いを失い、徐々に冷静を取り戻していった。
「……ねぇ」
「…」
「ねぇって!」
「ぇ……、ぁ…れ………、松野さん?」
肩を軽く揺すればすぐに彼女の目に光が戻った。今は状況がわかってないみたいで戸惑いが顔に出ている。
…なんだったんだ今の…。
「……えっと…、大丈夫?」
「…はい、大丈夫です…」
疑問は残るけど、さっきまでの勢いが止まったことでようやく自分が調子に乗りすぎてたことに気が付いた。
多分自分で思ってたより、元の世界に帰れるかもしれない期待に浮かれてたんだと思う。可能性があるだけで確実なことではないというのに、我ながら呆れる。
それで調子に乗って彼女を困らせるなんて…、いままでのこと謝るために今のこの機会を作ったってのに、本末転倒じゃんなにやってんだよ俺。
「…ごめん。調子乗ってた…」
ずっと喉の奥に引っ掛かってた言葉がスラッと出てきた。
彼女から距離をとって様子を伺えば、さっきまでの恐怖は消えたようで少し呆然としていた。でも俺の言葉を聞いて我に帰ったようで、大丈夫ですよと笑顔で返してきた。
……あんなことをしたのに、まだ俺にそんな顔を向けられるのか…。
『松野さんもあんな顔するんだなぁ』
俺でも彼女の声でもない、おっさんみたいな声が聞こえた。
俺等以外に言葉を発するのは一人……いや、一匹しかいない。
俺も彼女も目を丸くして、声の発信元を見る。
そこには案の定、俺の親友のニャンコが久々にその“口”を開いていた。
「え、今のって猫ちゃんの?」
「…だと思うけど、今の言葉は…」
確実に俺のじゃない。
“松野さん”なんて自分で言う訳がない。
だから今のは、彼女の言葉。
ここで初めて、彼女の本心が表に出されたのだ。
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渚(プロフ) - 月花さん» 月花さんコメントありがとうございます!この時のイラストはazpainter2を使用して1から描いていました。今はクラスタを使っています。 (2020年2月3日 19時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 前もこの小説を読ませていただきました。でも松沼にハマっているのでまた読ませていただきます。 絵上手いですね、どうやって描いてるんですか? (2020年2月3日 17時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 投稿頑張ってください!! (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆっこ - 一気に見ちゃいました!大体3時間位かな? (2019年8月31日 18時) (レス) id: c52c09b210 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - ふゆっこさん» ふゆっこさんコメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い…、でもとても嬉しいです、閲覧ありがとうございます! (2019年8月31日 17時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2016年2月15日 17時