87松 ページ36
「静かにして。A達話が終わったみたいだから一回切るよ?」
《待った、バレないように通話状態にしとけ。俺等も話聞きたい》
その方が俺等も状況把握できるだろ。という事で、一気に静かになったスマホをパーカーのポケットにしまい、A達が居間に来るのを待つ。
だけど二つの足音は居間を通り過ぎ、そのまま玄関の方へ。
そっと居間から出て覗けば、Aが爺さんを見送っているところだった。
でも爺さんは納得してない様な顔でまだAと何かを話している。何を話しているのかはこの距離からじゃあ聞き取れない。
もう少し近付こうかと考えたけど、その前にA達の話が終わったようで爺さんは渋々といった様子で帰っていった。
爺さんを見送った後、Aは玄関の戸を閉めて中に入ろうとする。
その顔はどこか疲れているように見えたけど、俺の視線に気が付いたのかすぐに笑顔を作った。
その目は少し赤く腫れていて、擦ったような跡も見えた。
「すみません、長々と話してしまって」
「いや、大丈夫。……で、何を話してたのか聞いてもいい?」
「……………」
渋い顔をするA。
口を固く結んで目を逸らしているあたり、まだ話してくれる様子は無い。
それは想定内だ。
「…話しづらい事なら今すぐ話せとは言わないけど、一人でどうにか出来る問題じゃないんでしょ?爺さんが血相変えて飛んで来るぐらいなんだから」
「……」
「迷惑掛けるから系の理由で話さないのは無しだよ。あんただってそんな感じで俺に余計な世話焼いてたんだから。あんただけ良くて俺は駄目なんて事はないでしょ?」
「……」
「……察してよ…。力になりたいんだよ、恩返しとかじゃなくてさ。そういうの関係無しに…、その………と…と…友達として……っていうか…、なんつーか…」
うまく言葉を紡げずしどろもどろになり、視線が泳ぎまくって最後の方は声もかなり小さくなってしまった。
だって自分の口から“友達だから助けたい”なんて綺麗事が出るなんて思ってもみなかったから…。
一生こんな言葉使う機会なんて無いって思ってたのに、我ながらこんな事を言うなんて…。でも今はそれしか言葉が見つからなかったから…。
臭い台詞に引かれてないかと思いAを見ると、驚いた顔で俺の顔を見ながら固まっていた。
驚いた顔っていうか、ポカーンって感じで。
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時