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『怪談4』 ページ14

ヒュー…と何処からか風が吹いてきた。隙間風だろうか。
明らかに空気が変わったのを感じたのか、Aの表情が強張る。



「知ってる?こういう怪談話をしていると呼び寄せやすくなるんだよ。百物語とかで有名じゃん。しかもこの村って地蔵菩薩がチラホラあるでしょ」

「…確かに田んぼの脇とかにチラホラありますけど、でもそれと怪談話になんの関係が――」



――ガタッ



障子が鳴った。
Aの肩が跳ねる。
俺はAから目を逸らさない。



「俺さっき地蔵関連の怪談話したじゃん。だからまぁ、案の定?」

 

障子の向こう側から何が蠢く気配がする。しかも複数。
Aは障子の方を恐る恐る見る。そしてその瞬間に顔を真っ青にさせた。



「…もうそこまで来ちゃってるからねぇ。さっきの怪談同様フラグ立っちゃってるから」



――ガタガタッ!!

音が次第に大きくなる。Aは腰が抜けているのか障子を凝視したまま震えている。

恐らく障子には蠢く何かの影が写っているのだろう。

チラチラ灯る蝋燭を受け皿ごと手に取る。
そしてその火を自身の口元に寄せた。



「ヒヒッ、怪談は生半可な気持ちでやるもんじゃないよ?」



フッ…と蝋燭の火を吹き消した。

数秒の沈黙。

そして―





――バシィンッ!!





「にゃー」「うにゃー」「ゴロゴロ」「なーお」「おにゃえい」

「おーよしよしよしグッドタイミングー、演出お疲れー」



障子の向こうから雪崩れ込むように入ってきたのは、この世界で出来た俺の友人達。

電気をつけてエキストラに参加してくれたお礼に煮干しを配りながら、Aにしたり顔をしてやった。

怪談とお地蔵様の関係性?んなの出任せに決まってる。



「どうだった?なかなか良い演出だったと思うんだけど」

「……」

「あれ、どうしたの?声も出ないくらい怖かった?」

「………」



まさに放心状態って感じだ。
目を見開いたまま固まって、状況が飲み込めないって顔をしている。

そしてノロノロと俺と猫達を交互に見て…



「………ぅ…ぐす…」

「…え?嘘」

「……ひぐっ……うえぇぇ…」

「ちょ、マジで!?ごごごごめんごめんなさいやり過ぎた泣かないで!!」



その後は猫達をかき集めてアニマルセラピーで必死にAを宥めた。

怪談とは違う意味で肝が冷えた。

66松→←『怪談3』



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(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年1月14日 17時

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