片手のないあの子【東リベ】3 (ページ18)

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「いくら似てるからって…」
「やっぱり他人任せはダメだな…」

降りしきる雨の中、傘もささずにフードだけ頭にかぶっている。

「オマエいなきゃ…」
「俺も…」
「……」

普段滅多に吸わないタバコを吸い、煙を吐く。
オマエが好きだったコーラを墓の前に置く。

「最近、差し入れしてなかったな」

辺りは誰もおらず、自分の煙を吐く音だけ響く。
しかし、ほんのわずかな音の為、雨の音にかき消される。
膝を抱え、目を伏せる。

「オマエじゃなくて…」
「俺がいなくなればよかったのかもな…」

言ってはいけない言葉だと自分でも理解してる。
また一本、箱から取り出し、慣れた手つきでライターでタバコに火をつける。

「タバコ(これ)やめろって言われたから飴食べだしたんだよなぁ…」

ポケットから俺宛に届いたはがきを取り出す。

「(何でこんな時に…)」

昔のような長文までとはいかないが、いつもより簡潔に書き綴られた文を改めて読み直す。

「"アイツのとこじゃなくて、こっちの暴走族(チーム)入ってよ"…か」

他にも手紙の主からはチームの幹部のこと等が書き綴られていた。

「(あの二人…贈り物は今でも付けてくれてるだろうか…)」

昔のようにはもう戻れないと心の中では諦めていたが、真と夢見た光景がどこかにあるんじゃないかとありもしない夢物語を現実にしたい自分もいた。
この気持ちは墓まで持っていくつもりだが、やはり本人達に言いたくなるどうしようも無い自分もいる。

「(近い内にぶつかるのかもな…)」

「万次郎は受け止めるだろうが、アイツは…」

言いかけた時、ケータイが震えた。
ケータイが雨に当たらないよう前屈みになって開いた。
予想した通りエマからのメールで「雨降ってるから急いで帰ってきて！風邪ひくよ！」とこちらの体調を心配するメールで思わず綻んだ。

「これ以上はエマに怒られるから」
「またくるよ、真」

雨に濡れたまだ数本程残ってる箱を墓の前に置く。

「あとはオマエが吸ってくれ」
「いつもの銘柄だ」

立ち去る際に墓をひと撫でして、墓地を後にした。
案の定びしょ濡れな俺が帰ると用意周到なエマが待ち構えていた。

「着替えは持っていくから」
「そのまま風呂場に行ってねー」
「湯も張ってるよー」

俺にバスタオルを投げ渡したエマは台所へと消えた。
フードを脱ぎ、そのまま風呂場に行った。
エマを見る度に少し複雑な気持ちになるのを無理やり抑え込んだ。