一生に一度の恋３ (ページ10)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:90,855 hit

. ページ10

.

それからは何も知らない無知の業界で
「明奈」として悪戦苦闘を繰り返し、
必死にもがいた。

自分に与えられた仕事を一生懸命にこなし、
良い結果が返ってくるように
自分で決めた決まりやルールを
鉄の鎧として自分自身に塗り固め、
《A》という本当の自分を守り続けた。

その頃にはカズもアルバイトの
掛け持ちを増やした様で
なかなかゆっくりと連絡を取り合う事も
減っていた。

そして昨年の６月。

カズの誕生日の日に電話をかけ、
２３歳のお誕生日おめでとう！
プレゼント何が欲しい？など
仲良く会話していた中、

「明日、…朝７時半に難波のバスターミナルね。」

『…っ！！
………もしかして、』

「…朝早いけどちゃんと遅れないで
迎えに来いよー(笑)
オレ、大阪全然分かんないんだから。」

『絶対行く！大丈夫！！』

カズが大阪に来る前日の夜、
珍しくいつもよりご機嫌で
テンション高めに仕事をこなす私を見て
丸ちゃんもニコニコと笑っていた。

「アッキーナ、いつもに増して今日は
ご機嫌さんやねぇ！何かあったン？」

『秘密ー。(笑)

…でも今日はずっっっと、
待ちに待ってた日なの！』

「…ははぁーん♪さては彼氏やなぁ？(笑)」

『彼氏なんて居ないよ。
でも…秘密ー。(笑)』

仕事は明け方に終わり、店で出前を取ったり
丸ちゃんやお店の女の子と喋ったりと
時間を潰す。

幸いバスターミナルの場所は
店から近かったのと、
一回家に帰ると寝てしまう危険性もあったので
仕事後そのままカズを迎えにいく事にした。

ソワソワして落ち着かない私は
到着予定の１５分前には着き、
椅子が並んでいる待合室でカズを待つ。

ちょっとドキドキする。

無意味にスマホを触ってみたり、
音楽を聴こうとしても
全然内容が頭に入ってこない。

目の前を朝の出勤ラッシュに揉まれた
会社員達が通り過ぎていく。

.