一生に一度の恋３ (ページ29)

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『……まぁ、そういう兄だけど
色々助けて貰って側に居てくれたから
今もこうやって暮らせてるって感じかな？(笑)』

「そのさ…。
Aの兄貴って…シスコン過ぎねぇ？」

腕組みをして真剣に私の過去を
聞いてくれていたかと思ったら
ちょっと睨むような顔で言ってきた。

『えぇ！？…そうなの？』

「いや、俺も妹いるけどさ
そんな普段からべったりとかあり得ねーし、
ましてや妹追っかけて
大阪まで来るとか考えらんねーって。」

『…何か家庭環境とかぐちゃぐちゃだったし、
普通の兄妹の距離感とか全然知らない…。』

すると、眉間に皺を寄せ鋭い目付きで
櫻井さんが疑問を投げかけてきた。

「…どうする？
……本当の兄妹じゃなかったら。
ちゃんと確かめた事あんのかよ。」

…えっ？何言ってるの？
彼の意味が分からない言葉に
少しパニックになったが、冷静に思い返す。

確かに初めてカズと会った時に本人から
オレ達、兄妹なんだよ。と告げられただけで
確かめるにもお母さんは既に居なかったし、
カズに聞いた所で
多分その手の質問はかわされるだけだ。

家に初めてカズが来た時も
お母さん側の親族は皆、父親を毛嫌いしている事を
カズももちろん知っていたので、
「ここでオレが《アイツ》の息子だって言ってみ？
伯母ちゃん、ひっくり返るぞ(笑)」と
忠告された為、彼氏として誤魔化していた。

確認するにもやりようがない。

櫻井さんの想定外な質問に
頭が混乱して落ち着いて考えていられなくなり、
ごめん…。ちょっとトイレ行ってくる。
と告げ、その場を離れた。

トイレの洗面台の鏡で自分自身を見つめる。

…私達、兄妹じゃなかったら？

嘘だ。そんなのあり得ない。

でも、もし兄妹じゃなかったら
カズは誰？何者？
何の為に私と居るの？

あんな辛い時も楽しい時も
ずっと一緒に居て、支えてもらってきた。

カズの包み込む様な優しさは
嘘だとはどうしても思えない。
それだけは言える。

でも８年以上前の事を語らないカズに
ほんの少しだけの不信感が残り、
櫻井さんが突き付けてきた問題を
完全に払拭する事が出来ない。

…そして何で櫻井さんは
あんな事言ってきたんだろう。

楽しいお食事だった筈なのに。
今日を凄い楽しみにしていたのに。

そう思うと胸が苦しくなって
目頭が熱くなり、涙が少し溢れた。

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