クラシック・ローズ【朔間零】 (ページ7)

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月をも奪うページ7

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車を地下の駐車場に停めて、二人で車を降りる。

さっきは大変だった。困ると言っておきながら
なかなか零が離してくれなかったから
何回も、同じやり取りと繰り返していたら
やっと離してくれた。車に乗っても
信号が赤になったら私のこと鬱陶しいくらいに触ってくるしで。

今も今で、腕を組んでいるのにも関わらず
手まで繋いできて、秋という肌寒い季節だというのに
ずっと体中暑くてしょうがない。

「れーい、今日しつこいよ」
「けどAは、別に嫌じゃないじゃろ？」
「……そんなことないけど、」
「図星じゃな？くく、可愛い奴め」

カツカツ、と私のヒールと彼のブーツが
駐車場のコンクリートの地面を踏むたびに音が鳴る。
この音は別に嫌いではなかった。
むしろ聞いていて心地いいくらい。

エレベーターのボタンを押して、暫く待つ。
この時間帯は私たちしか乗らないし、
高級マンション街だ。セキュリティーも厳重だ

「明日は、零の実家に送ればいいんだよね」
「あぁ」

明日は久しぶりに弟と家族と一緒に
夕食をとるのだと言っていた。
それを月曜日に聞かされた時、この人は
本当に弟のことを溺愛しているんだと心が温まった。
それに零も零で嬉しそうで。

この今の日々がとても幸せなんだと十分伝わっていた

「…木曜日は、薫くんと行動が多いのか」
「うん。でも、最後の仕事は零と一緒だから」
「うむ。UNDEADのジャケット撮影じゃからのう。
精を出してうんと頑張るぞい」

35階です。と機械的な声のアナウンスが喋る
ここを歩いて、すぐに零が毎日帰って暮らす場所がある

「また明日な」
「うん。また明日」
「薫くんに口説かれても靡くんじゃね～ぞ？」
「零こそ、ほかの女優に口説かれても靡かないでよね」
「当たり前じゃろう？我輩、A以外このかた
好きだって思える相手は出来たことないんじゃよ」

二人で笑い合って零がドアに手をかけて
バイバイと手を振る。
私もそれに返す形で手を振り返した。

名残り惜しいくらいに切な顔をするのも
いつものこと。扉が閉まったと思えば

その数分後にメッセージが届くことも
いつも通りの日常であった。