クラシック・ローズ【朔間零】 (ページ6)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:18,100 hit

短い告白ほど胸に刺さる、らしいページ6

.

「は～、つっかれた…」

急に脱力モードに入ってしまったのか
零はぐったり座り込んでそこそこ質のいい
オレンジの椅子が一気に沈む。

ギギギ、と特有の音がして
零が体重をかけて座ったことが分かる。

「お疲れ様。零」
「んー…、Aも今日一日ありがとな」
「私はサポートする側だし、殆ど立って見守る
ことくらいしかできてないよ」
「んなことね～よ。俺様は、お前がいるだけで、
癒されるし何より仕事頑張れる糧になんだよ」

疲れがどっと出たのか零は、眠たそうに
目を瞑りながら、答えていた。
そんな彼を見て私は、ふぅと一息ついて
彼に心の中で今日も頑張ったね、と再度慰めてみた。

「零、眠たいでしょ？車の用意するから帰――」
「待て」
「え？」

会議室から、出ようとする私の腕を掴んで
勢いよく引っ張られる。咄嗟に起こった出来事
だったから、間抜けな声とドタドタと汚い足音しか
私の耳には聞こえていなくて。

気づけば、零の胸の中。
ふんわりと香る彼の匂いは、私の心をきゅっと閉じ込める

「れ、零っ」
「もうここ、誰もいないじゃろう？皆、帰っていく足音がした」

だからと言って、どこでも構わず盛ろうとする
男に甘い飴を易々とあげられる気はなかった

離してと言って少しでも抵抗すれば
彼の好奇心と、悪戯心を動かしてしまうのに。

私はいつもこうやって同じ手口に嵌っていたりもする。

「離して、零」
「Aの匂いいい香りじゃのう…、じゃけど、
この香水、前に我輩があげた奴じゃないのう」
「ちょっと零、」
「でもこの匂い、我輩も好きじゃよ。今度
デートする時にでも二人でお互い香水を買って
プレゼントし合うのも魅力的じゃ」

話を聞かない零は私の言葉を無視し続ける
抵抗をあきらめて、黙っていると
零がくつくつと笑い声をあげた。

「やっとその可愛いお口が黙りおった」
「……車でバイバイするけど」
「ううん、それは困るのう。我輩は、Aが
玄関まで送ってくれることが日課なんじゃ」

ちゅ、とおでこにキスが降りかかる。
ちょっと触れ合っただけなのに相当顔が熱くなる

零は、私の体温をあげてしまう元凶だね。