クラシック・ローズ【朔間零】 (ページ5)

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くちびるの弾丸ページ5

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『初めまして。本日はよろしくお願いいたします』
「こちらこそ。よろしくお願いいたします」

慣れたものだなぁ、と壁に寄りかかって
彼と記者のインタビューをぼーっと眺めていた
アイドルと言っても、卒業したての頃は
ある程度の夢ノ咲出身の卒業生として
注目を浴びて雑誌のインタビューが入っていたのだけれど

その時はあー、だとかえー、だとか
無駄な言葉が多かったのに
今じゃ、もう答えられた質問にすぐに考えて
ぱっと長い文章を口に出すあたり
ロボットなんじゃないかと疑うくらい、それはもう
完璧に仕立てられていた。

『最近、決まりました愛と三角関係が題材の
ドロドロとした重い内容のドラマが話題となっています、
主人公の幼馴染役としての出演ですが、今の気持ちとしては
如何なものでしょうか？』

「舞台なら経験があるのですが
何せ、ライブ中心とした活動ばかりだったので今回は
卒業して初めての大きな仕事なので緊張はあります。
それに、恋愛モノは初めてやるのでやるからには
徹底的にその役を掴んでこの原作を読んでいらっしゃる
読者様にも、納得満足してもらえるような演技をしたいです」

…ロボットだ。
答えも、マニュアルでもあるんじゃないかと疑うしかない
素晴らしい返答に心の中でスタンディングオベーションをした

『なるほど。朔間さん自身はこの恋愛に
憧れとか、ありますかね』

(笑)が、雑誌の文章に付きそうな
無茶ぶりな質問に私は思わず顔を歪めた
ファンはこういう質問を望んでいたりするので
記者にとってもファンにとっても需要しかない
質問なのだ。だが、零はいとも簡単に
スラスラとまた答え始める

「ドロドロなら、夢ノ咲だった頃に多く経験したので
今はもう当分いらないですね。平和で、ゆったり
とした幸せしかない恋愛が一番僕にとっても
その恋人にとっても理想なんじゃないでしょうか」

口元をほころばせ、営業スマイルをする零。
ありがとうございました、と記者が言えば
今日の零の仕事が終わりだ。

握手を交わして、名刺を交換する。
仕事が終わった解放感からなのか、
どこか嬉しそうに記者を見送っている零。

二人きりになったとき零は動き出す。